本件檜立木の売買契約は、被上告人(買主)が上告人(売主)の窮迫、軽卒、または無経験に乗じてなしたものではなく、昭和三六年四月二七日被上告人において現物を見ることなく代金一五、〇〇〇円をもつて契約されたもので、昭和三七年一月一八日転売された代金は金五〇、〇〇〇円である等原判決説示の事実関係からすれば、本件売買契約を暴利行為でないとした原審の判断は正当である。
売買契約が暴利行為でないとされた事例
民法90条,民法555条
判旨
売買代金と転売価格に開きがある場合でも、相手方の窮迫、軽卒、または無経験に乗じてなされた事実が認められないときは、当該売買契約を暴利行為として公序良俗に反し無効であるということはできない。
問題の所在(論点)
売買代金(1万5000円)と後日の転売価格(5万円)に約3.3倍の差がある場合、相手方の窮迫等の事情を欠いても、民法90条の公序良俗違反(暴利行為)として契約は無効となるか。
規範
民法90条の公序良俗違反(暴利行為)に該当し契約が無効となるためには、単に給付と反対給付の間に著しい不均衡が存在するだけでなく、相手方の「窮迫、軽卒または無経験」に乗じて契約を締結したという主観的態様が必要である。
重要事実
上告人は被上告人に対し、昭和36年4月27日に檜立木を代金1万5000円で売却した。被上告人は当該立木を見ることなく本件契約を締結し、その後、昭和37年1月18日に訴外Dに対し5万円(現場渡)で転売した。上告人は、本件契約が暴利行為であり公序良俗に反して無効であると主張した。
あてはめ
本件において、被上告人が上告人の窮迫、軽卒または無経験に乗じたと認めるべき証拠は存在しない。また、被上告人は契約締結時に目的物を見ることなく購入している。売買代金と転売価格の間に差がある点は認められるものの、相手方の困窮等に付け込む不当な主観的意図が認められない以上、本件売買契約を直ちに暴利行為と評価することはできない。したがって、公序良俗に反するとは認めがたいとした原審の判断は正当である。
結論
本件売買契約は公序良俗に反せず、有効である。したがって、暴利行為による無効を主張する上告人の請求は認められない。
実務上の射程
暴利行為の成否において、客観的な不均衡(対価の妥当性)だけでなく、主観的要件(窮迫・軽卒・無経験の利用)を重視する実務上の判断枠組みを示す。司法試験では、民法90条の類推適用や解釈において、暴利行為の判断要素を「客観的要件」と「主観的要件」に分けて論述する際の根拠となる。
事件番号: 昭和34(オ)126 / 裁判年月日: 昭和37年4月20日 / 結論: 棄却
第二審判決理由を是認した判決。