原審認定の諸事情のもとでは、賃料および延滞賃料額の催告期間は一週間は不相当でない。
賃貸借契約の解除の前提としての催告期間の当否
民法541条
判旨
賃貸借契約の解除に必要な催告期間が相当であるか否かは、賃料月額や延滞賃料額、その他諸般の事情を総合的に勘案して判断される。本件では1週間の催告期間であっても不相当とはいえず、解除権の行使は有効である。
問題の所在(論点)
賃料延滞に基づく解除において、1週間という催告期間が民法541条の「相当の期間」として認められるか。また、当該解除権の行使が信義則に反し、または権利の濫用にあたらないか。
規範
民法541条に基づく履行の催告における「相当の期間」とは、債務者が履行の準備をし、現実に履行するのに必要な期間を指す。この期間の妥当性は、単に日数のみならず、債務の内容、延滞の程度、過去の支払状況等の諸般の事情を総合考慮して決せられる。
重要事実
賃借人(上告人)が賃貸人(被上告人)に対し、家屋の賃料を延滞したため、賃貸人は1週間の期間を定めて延滞賃料の支払を催告し、その後に賃貸借契約の解除を主張した。これに対し賃借人側は、催告期間の不相当性、留置権の抗弁、および解除権行使が信義則・権利濫用に該当することを主張して争った。
あてはめ
本件家屋の賃料月額および延滞賃料額に照らすと、賃借人にとって支払の準備に要する負担は過大とはいえない。また、原審が認定した諸般の事情(具体的な経緯は判決文からは不明だが、これらを斟酌すれば)を考慮すると、1週間という期間は債務の履行を促す期間として決して不相当ではない。さらに、これまでの契約の経緯を併せれば、解除権の行使が信義則に反したり権利を濫用したりするものとも評価できない。
結論
1週間の催告期間は相当であり、当該期間経過による解除権の行使は有効である。したがって、賃貸借契約の解除に基づく賃借人の敗訴は維持される。
実務上の射程
賃料延滞事案における「相当の期間」の判断基準を示した。実務上、数日程度の短い期間であっても、延滞額や当事者間の信頼関係の破壊度合いによっては「相当」と認められる余地があることを示唆している。答案上は、催告期間の長短を検討する際の考慮要素(金額・期間・態度)として本判例を援用できる。
事件番号: 昭和35(オ)707 / 裁判年月日: 昭和37年2月2日 / 結論: 棄却
一七カ月分の延滞家賃の支払の催告書が賃借人に到達した二日後に賃貸借解除の意思表示が到達するなど原審認定の諸事情のもとでは、右催告は、民法第五四一条にいう相当期間を定めてなされたものとは解せられない。