一七カ月分の延滞家賃の支払の催告書が賃借人に到達した二日後に賃貸借解除の意思表示が到達するなど原審認定の諸事情のもとでは、右催告は、民法第五四一条にいう相当期間を定めてなされたものとは解せられない。
延滞家賃の支払催告をなし更にその二日後に解除の意思表示をした場合に相当期間を定めた催告があつたと認められなかつた事例
民法541条
判旨
賃貸借契約の解除において、催告から解除までの間に民法541条所定の「相当の期間」が存しない場合には、当該解除の意思表示は効力を生じない。
問題の所在(論点)
催告から解除の意思表示までの期間が極めて短い場合(本件では2日間)、民法541条にいう「相当の期間」を経過したものとして解除の効力が認められるか。
規範
民法541条に基づく解除権の行使が認められるためには、債務者に対し「相当の期間」を定めて履行を催告し、その期間内に履行がないことが必要である。この「相当の期間」の有無については、当事者双方の経済事情その他契約に関する客観的諸事情を総合的に考慮して判断される。
重要事実
賃貸人(上告人)は、賃借人(被上告人)に対し、昭和26年5月30日に17か月分の延滞賃料(月額400円)の支払を催告した。しかし、そのわずか2日後である同年6月1日に、賃貸借契約解除の意思表示を記載した書面を賃借人に到達させた。
あてはめ
本件では、17か月分という長期の延滞賃料の支払を求めているにもかかわらず、催告の到達から解除の意思表示までわずか2日間しか経過していない。当事者双方の経済事情や契約の客観的諸事情に照らせば、債務者が履行の準備をし、現実に支払を行うために必要な期間を確保したとは言い難い。したがって、本件における催告と解除の間には、法が求める「相当の期間」が存しないと評価される。
結論
相当の期間を存しないままなされた解除の意思表示は、解除の要件を欠くため効力を生じない。
実務上の射程
催告期間が「不相当」な場合、直ちに無効となるわけではなく、催告自体は有効であり、相当期間経過後に解除の効力が発生するというのが現在の通説的理解であるが、本件判旨は「効力を生じない」とするにとどまる。答案上は、相当期間の判断基準(経済事情・客観的諸事情)を引用し、催告後の期間が短すぎる場合には解除を認めない論拠として用いる。
事件番号: 昭和36(オ)438 / 裁判年月日: 昭和37年8月21日 / 結論: 棄却
家屋の賃貸人が契約解除の前提として同一市町村に住む賃借人に対し過去約一年間の延滞賃料約三万円の催告をなすにつき定めた期間が一日であつても、賃貸人賃借人間に約三年前より家屋明渡請求訴訟が継続し、右訴訟において賃借人が家屋所有権の帰属を争い、あるいは賃料の増額を争つて賃料の支払を拒否したまま経過したなど判示事情があるときは…