家賃賃貸人が商人である賃借人に対し五月一日に延滞賃料の一八万余円(四年分)の支払催告をしたのち五月五日解除の意思表示をした場合において、五月二日が士曜日、五月三日および五日が休日であつても、その解除の意思表示は催告後相当の期間経過後のものとして有効である。
延滞家賃の催告と解除の意思表示との間に相当の期間が存すると認められた事例。
民法541条
判旨
民法541条の「相当の期間」とは、債務者が履行の準備を完了するために要する期間ではなく、既に履行の準備が概ね整っている債務を履行するために要する期間を指す。
問題の所在(論点)
民法541条に基づく解除の有効要件である「相当の期間」の意義、及び債務者が商人で対象が金銭債務である場合に、連休を含む4日間の経過が「相当の期間」といえるか。
規範
民法541条(催告による解除)にいう「相当の期間」とは、履行期を徒過した債務者に対し、解除を免れるための最後の履行の機会を与える趣旨である。したがって、それは催告を受けてから初めて履行の準備を開始しこれを完了するに要する期間ではなく、既に履行の準備が大体できているものを提供するために要する期間と解するのが相当である。
重要事実
賃貸人(上告人)は、昭和34年5月1日、賃借人(被上告人)に対し、昭和30年4月1日以降の延滞賃料(月額3,700円、合計約18万円)の支払を求める期限の定めのない催告を行った。その後、同年5月5日に解除の意思表示をした。当該期間中、5月2日は土曜日、3日及び5日は休日であった。賃借人は商人であった。
あてはめ
債務者が商人であり、債務の内容が約18万円という金銭の支払である本件においては、催告から解除まで4日間が経過している。たとえその間に土曜日や休日が含まれていたとしても、既に履行期を徒過した金銭債務の提供に要する期間としては十分である。本件の期間は、債務の性質や取引慣行、信義則に照らし、既に準備されているはずの履行を提供するための「相当の期間」を経過したものと評価できる。
結論
本件解除の意思表示は、相当の期間を経過した後になされたものとして有効である。
実務上の射程
解除の催告期間の相当性を判断する際のリーディングケースである。答案上は、期間が極めて短い場合(本件のように数日など)であっても、債務の性質(特に金銭債務)や債務者の属性(商人等)を考慮し、履行の『提供』に要する期間で足りるという理屈で解除の有効性を肯定する際に活用する。
事件番号: 昭和35(オ)707 / 裁判年月日: 昭和37年2月2日 / 結論: 棄却
一七カ月分の延滞家賃の支払の催告書が賃借人に到達した二日後に賃貸借解除の意思表示が到達するなど原審認定の諸事情のもとでは、右催告は、民法第五四一条にいう相当期間を定めてなされたものとは解せられない。