判旨
債務不履行に基づく契約解除の催告において、指定された猶予期間が不当に短い場合であっても、催告自体は有効であり、相当期間の経過とともに解除権が発生する。
問題の所在(論点)
履行の催告において定められた猶予期間が短すぎる場合、その催告およびその後の解除の意思表示は有効か。民法541条(旧法下における判断)の「相当の期間」の解釈が問題となる。
規範
債務不履行による契約解除(民法541条)における相当期間を定めた催告に関し、指定された猶予期間が客観的にみて短すぎる場合であっても、催告自体が無効となるわけではない。催告後、客観的にみて相当な期間が経過すれば解除権が発生し、その後に解除の意思表示がなされれば契約は有効に解除される。
重要事実
賃貸人(被上告人)は、賃借人(上告人)に対し、賃料不払いを理由として、2日間の猶予期間を定めた支払の催告を行った。その後、被上告人は契約解除の意思表示を含む訴状を提出し、当該訴状は催告から約11日が経過した時点で上告人に到達した。
あてはめ
本件における2日の猶予期間は短きに失するが、催告そのものは有効である。解除の意思表示を包含する本件訴状が到達したのは催告から約11日後であり、この間に相当期間は経過したと評価できる。したがって、訴状の送達時において解除権は発生しており、送達と同時に解除の効果が生じる。また、本件20万円は権利金と認定されており、敷金充当による債務消滅の余地もない。
結論
催告に定められた期間が不当に短くても、相当期間の経過によって解除権は発生するため、訴状送達時の解除は有効である。上告を棄却する。
実務上の射程
催告期間が不足している場合でも、直ちに催告をやり直す必要はなく、相当期間待機した上で解除の意思表示を行えば足りるという実務上の指針を示す。答案上は、催告の有効性と解除権発生の時期を分けて論じる際に活用すべき判例である。
事件番号: 昭和38(オ)307 / 裁判年月日: 昭和39年10月27日 / 結論: 破棄自判
家賃賃貸人が商人である賃借人に対し五月一日に延滞賃料の一八万余円(四年分)の支払催告をしたのち五月五日解除の意思表示をした場合において、五月二日が士曜日、五月三日および五日が休日であつても、その解除の意思表示は催告後相当の期間経過後のものとして有効である。