借家契約を合意解除するとともに、賃貸人において賃借人に対し二年間の明渡猶予を認め、賃借人において賃貸人に対し造作買収請求権を放棄する旨を定めた和解契約は、借家法第六条に違反しない。
造作買収請求権放棄の和解契約と借家法第六条
借家法6条
判旨
借家契約の終了確認および明渡猶予を目的とする和解契約において、借主が造作買取請求権を放棄する特約は、特段の事情がない限り借家法6条(現行借地借家法37条)の強行規定に抵触せず、有効である。
問題の所在(論点)
借家契約終了確認と明渡猶予を目的とする和解契約においてなされた造作買取請求権の放棄特約は、借主にとって不利益な特約を無効とする借家法6条(現行借地借家法37条)に違反し、無効となるか。
規範
借家法5条(現行33条)の造作買取請求権を排除する特約であっても、賃貸借契約の終了を合意し、明渡しの猶予などの代替的利益が与えられている和解契約の一環としてなされた場合には、借家人に一方的に不利益なものとはいえず、同法6条(現行37条)により無効とされるものではない。
重要事実
上告人(借主)と被上告人(貸主)との間で、被上告人が行った契約解除により借家契約が終了したことを相互に確認した。その際、上告人に対して2年間の明渡猶予期間を認めることを内容とする和解契約を締結した。この和解条項の中に、借主が造作買取請求権を放棄する旨の特約が含まれていたため、その有効性が争われた。
あてはめ
本件特約は、単なる賃貸借契約の付随条項ではなく、既に契約が終了したことを前提に、紛争解決のために締結された和解契約の一部である。この和解により、借主は2年間という長期の明渡猶予期間という利益を享受している。このような事情のもとでは、造作買取請求権の放棄を定めたとしても、借家人を不当に圧迫するものではなく、強行規定の趣旨に反する実質的な不利益はないと評価される。
結論
本件放棄特約は借家法6条(現行借地借家法37条)に違反せず、有効である。
実務上の射程
契約終了時の紛争解決としての和解(合意解約を含む)の場面においては、強行規定による制約が緩和されることを示す。ただし、明渡猶予や解決金の支払いなど、借主側への「代償的利益」が事実認定において重要となる。答案上は、形式的に不利益特約に該当する場合でも、和解の文脈であれば実質的妥当性の観点から有効性を肯定する根拠として活用できる。
事件番号: 昭和32(テ)14 / 裁判年月日: 昭和32年12月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法25条は、個人の自由な意思に基づく契約により生じた家屋明渡債務につき、裁判所がその履行を命ずることを禁ずるものではない。また、簡裁を第一審とする民事事件の上告審を高等裁判所とする制度も憲法に違反しない。 第1 事案の概要:上告人は、相手方との間で成立した調停に基づき家屋明渡の債務を負担すること…