判旨
条件の成就によって不利益を受ける当事者が、故意にその条件の成就を妨げたときは、相手方はその条件が成就したものとみなすことができる(民法130条)。本件では、賃借人が明渡しに応じないことで貸主の自己使用という条件の成就を妨げた場合、条件成就が認められる。
問題の所在(論点)
「貸主による自己使用」という条件が付されている場合において、賃借人が明渡しを拒絶することによって当該条件の成就(現実の自己使用)を妨げたときに、民法130条により条件が成就したものとみなされるか。
規範
条件の成就によって不利益を受ける当事者が、信義則に反してその成就を妨げた場合には、民法130条に基づき、相手方は当該条件が成就したものとみなすことができる。本条の適用にあたっては、条件成就を妨害する行為の有無、およびその行為が信義則上不当といえるか否かが判断の基準となる。
重要事実
店舗の賃貸借契約において、「期限(昭和29年6月20日)の到来」および「貸主において自ら本件店舗の部分を使用すること」を条件として賃貸借が終了し、賃借人が明渡義務を負う旨の調停が成立した。貸主は、店舗部分の明渡しを受けて喫茶店区域を拡張して自ら利用する意向を有していたが、賃借人が明渡しに応じなかったため、貸主は現実の自己使用を開始することができなかった。
あてはめ
本件調停条項における「自ら使用する」とは、単なる意思では足りず、現実に自ら使用できる状態にあることを要する。しかし、そのためには賃借人が期限に一応店舗を明け渡し、貸主が使用できる状態に置くことが必要である。賃借人は明渡義務を負う立場にありながら、貸主の拡張・利用の要求に応じず明渡しを拒んだ。これは条件成就によって不利益を受ける当事者(賃借人)が、故意にその成就を妨げたものといえる。したがって、民法130条の規定を適用し、条件は成就したものとみなされる。
結論
賃借人が明渡しを拒否して貸主の自己使用を妨げた以上、民法130条により条件は成就したものとみなされ、賃貸借契約は終了する。したがって、賃借人は明渡義務を免れない。
事件番号: 昭和34(オ)170 / 裁判年月日: 昭和37年4月10日 / 結論: 棄却
借家契約を合意解除するとともに、賃貸人において賃借人に対し二年間の明渡猶予を認め、賃借人において賃貸人に対し造作買収請求権を放棄する旨を定めた和解契約は、借家法第六条に違反しない。
実務上の射程
停止条件付債務において、条件成就に協力すべき債務者がその協力を拒むことで条件成就を阻む事案(本件のような明渡しと自己使用のケース)に対し、民法130条を適用して信義則上の調整を図る際の典型的な論理構成として活用できる。
事件番号: 昭和30(オ)196 / 裁判年月日: 昭和31年11月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判上の和解において、一定の期間まで賃貸借契約を存続させ、その期間満了と同時に解約し建物を収去して土地を明け渡す旨の合意は、期限付の合意解約として有効である。 第1 事案の概要:賃貸人(被上告人)と賃借人(D)との間で、従前の土地賃貸借契約を昭和28年5月末日まで存続させるが、当該期間の満了と同時…
事件番号: 昭和36(オ)1307 / 裁判年月日: 昭和39年1月23日 / 結論: 破棄差戻
一 山林売却斡旋依頼とともに判示内容の停止条件付報酬契約がなされた場合において、委任者が受任者を介せず右山林を他に売却したときは、受任者は条件が成就したものとみなして、約定報酬の請求ができる。 二 停止条件の成就を故意に妨げた場合には、期待権侵害による不法行為が成立する。