一 山林売却斡旋依頼とともに判示内容の停止条件付報酬契約がなされた場合において、委任者が受任者を介せず右山林を他に売却したときは、受任者は条件が成就したものとみなして、約定報酬の請求ができる。 二 停止条件の成就を故意に妨げた場合には、期待権侵害による不法行為が成立する。
一 停止条件の成就を故意に妨げたとして報酬請求権が認められた事例 二 停止条件の成就を故意に妨げた場合と不法行為の成立
民法130条,民法656条,民法648条,民法128条,民法709条
判旨
停止条件付契約の債務者が、自ら対象物件を第三者に売却して条件成就を履行不能にした場合、条件成就を熟知していれば故意に条件成就を妨げたものとみなされ、民法130条により条件が成就したものとみなされる。
問題の所在(論点)
停止条件付契約の債務者が、自ら目的物を第三者に売却して条件成就を不可能にした場合、民法130条(条件成就の擬制)の「故意にその条件の成就を妨げたとき」に該当するか。
規範
民法130条にいう「条件が成就することによって不利益を受ける当事者が故意にその条件の成就を妨げたとき」とは、条件成就の可能性を熟知しながら、信義則に反して条件の成就を客観的に不可能にする行為を行うことを指す。債務者が自ら履行不能の原因を作出した場合には、特段の事情がない限り、条件成就を妨げる「故意」があったと認めるのが相当である。
重要事実
山林所有者である被上告人は、上告人に対し山林売却の斡旋を依頼し、一定額以上で売れた場合には報酬の支払と借入金債務の免除を行う旨の停止条件付契約を締結した。しかし、被上告人は後に、上告人の斡旋を経ずに自ら第三者に対し山林を売却した。被上告人は売却交渉中に妻を上告人方に遣わして相談を試みたが会えなかったという経緯があった。
事件番号: 昭和38(オ)237 / 裁判年月日: 昭和40年3月19日 / 結論: 棄却
公正証書には担保物件として土地および建物を供した旨の記載があるのに、その作成を嘱託した委任状には単に建物を供した旨の記載があるにすぎない場合にも、真実該公正証書記載どおりに作成すべき権限を有していたのに土地の記載を脱落したものであることが明らかなときは、右瑕疵は該公正証書の無効をきたす重大なものとは解されない。
あてはめ
被上告人は停止条件付契約を締結しており、その条件の存在を熟知していた。自ら第三者に山林を売却する行為は、上告人による斡旋の余地をなくし、条件成就を履行不能にするものである。被上告人が相談を試みたが会えなかったという事実があっても、依然として条件成就を妨げる故意は否定されない。したがって、解約等の特段の主張・立証がない限り、上告人は条件が成就したものとみなすことができる。
結論
被上告人が自ら山林を売却した行為は条件成就を故意に妨げたものといえるため、民法130条により条件は成就したものとみなされ、報酬支払義務および債務免除の効力が生じる。
実務上の射程
民法130条の「故意」の認定基準を示す。条件成就を阻害する客観的事実があれば、主観的な弁明(相談しようとした等)があっても原則として故意が認められる。また、期待権侵害としての不法行為責任の成立も示唆しており、選択的請求の構成に有用である。
事件番号: 昭和36(オ)238 / 裁判年月日: 昭和39年10月6日 / 結論: 破棄差戻
本人が他人に対し自己の印章を交付し、これを使用してある行為をなすべき権限を与え、その他人がこれを使用し、代理人として、第三者との間で権限外の行為をした場合、当該行為をする際に通常人であれば代理人の権限について疑念をもつような特別の事情があるときは、第三者が、印章を託された代理人にその取引をする代理権があると信じたとして…
事件番号: 昭和26(オ)560 / 裁判年月日: 昭和28年11月12日 / 結論: 棄却
一 一抵当権設定契約とともになされた停止条件付代物弁済契約は、特段の事由のないかぎり、代物弁済の予約と解すべきものである。 二 右の場合において、抵当権を実行するか、代物弁済の予約を完結させるかは、債権者の選択に委される。
事件番号: 昭和39(オ)76 / 裁判年月日: 昭和41年6月28日 / 結論: 棄却
一 復代理人を選任しえない場合に、原審が復代理人が適法に選任されたと判断したことは違法であるが、原判示事実関係(原判決理由参照)に照らせば、代理人が復代理人としてではなく自己の代理人を選任したものと解する余地があり、右代理人の代理人について代理人のため、また、代理人について本人のため、順次民法第一一〇条の表見代理が成立…