判旨
裁判上の和解において、一定の期間まで賃貸借契約を存続させ、その期間満了と同時に解約し建物を収去して土地を明け渡す旨の合意は、期限付の合意解約として有効である。
問題の所在(論点)
裁判上の和解において、将来の特定の日における解約と建物収去・土地明渡しを約束した場合、その法的性質を期限付合意解約と解することができるか、またその有効性が認められるかが問題となる。
規範
土地賃貸借契約において、将来の特定の時点をもって契約を終了させ、賃借人が地上建物を収去して土地を明け渡す旨を合意することは、期限付合意解約として認められる。このような合意が裁判上の和解として成立した場合、その内容に従った法的拘束力が生じる。
重要事実
賃貸人(被上告人)と賃借人(D)との間で、従前の土地賃貸借契約を昭和28年5月末日まで存続させるが、当該期間の満了と同時に契約を解約し、Dが地上建物を収去して土地を明け渡すことを内容とする裁判上の和解が成立した。その後、期限が到来したため明渡しを求めたところ、当該和解の趣旨が争点となった。
あてはめ
本件和解の内容は、単なる将来の解約予告ではなく、昭和28年5月末日の到来を解除条件(あるいは確定期限)とする契約終了の合意である。和解条項において、期間満了と「同時に解約」し、かつ「地上建物を収去して土地を被上告人に明渡すべき」ことが明記されている。これは、当事者間において将来の一定時点での契約終了を確定させる明確な意思表示があったといえる。原審の証拠に基づき、本件和解は期限付合意解約の趣旨であったと認定される。
結論
本件和解は期限付合意解約としての効力を有し、期間満了により賃貸借契約は終了する。したがって、上告人の請求を棄却した原判決は妥当である。
実務上の射程
事件番号: 昭和42(オ)666 / 裁判年月日: 昭和43年3月28日 / 結論: 棄却
裁判上の和解により成立した土地賃貸借についても、土地の利用目的、地上建物の種類、設備、構造、賃貸期間等諸般の事情から、賃貸借当事者間に短期間にかぎり賃貸借を存続させる合意が成立したと認められる場合には、右賃貸借は、借地法第九条にいう一時使用の賃貸借に該当し、同法第一一条の適用を受けないと解すべきである。
借地借家法(旧借地法)の下でも、合意解約は原則として自由であり、裁判上の和解という厳格な手続で行われる期限付合意解約の有効性を肯定した事例である。実務上は、更新拒絶の正当事由が争われる場面等において、和解によって将来の明渡しを確約させるスキームの有効性を裏付ける判例として活用できる。
事件番号: 昭和36(オ)1054 / 裁判年月日: 昭和38年5月21日 / 結論: 棄却
借地法第一七条の適用ある賃貸借契約に同法第一八条の適用がないとする根拠はない。