裁判上の和解により成立した土地賃貸借についても、土地の利用目的、地上建物の種類、設備、構造、賃貸期間等諸般の事情から、賃貸借当事者間に短期間にかぎり賃貸借を存続させる合意が成立したと認められる場合には、右賃貸借は、借地法第九条にいう一時使用の賃貸借に該当し、同法第一一条の適用を受けないと解すべきである。
裁判上の和解により成立した土地賃貸借と借地法第一一条
借地法11条,借地法9条,民訴法203条
判旨
裁判上の和解により成立した賃貸借であっても、当然に借地法の適用が排除されるわけではなく、諸般の事情を考慮して一時使用の賃貸借(借地法9条)に該当すると認められる客観的合理的な理由がある場合に限り、同法11条の適用がないと解すべきである。
問題の所在(論点)
裁判上の和解によって成立した賃貸借契約について、借地法11条(現:借地借家法9条・10条等)の強行規定の適用が排除されるか、また一時使用の賃貸借(現:借地借家法25条)として認められるための要件が問題となった。
規範
裁判上の和解による賃貸借についても、土地の利用目的、地上建物の種類、設備、構造、賃貸期間等、諸般の事情を考慮し、賃貸借当事者間に短期間に限り賃貸借を存続させる合意が成立したと認められる客観的合理的な理由が存する場合に限り、借地法9条の一時使用の賃貸借に該当し、同法11条(強行規定)の適用がないと解する。裁判上の和解という形式のみをもって直ちに同法の適用を免れると解することは、借地人保護の趣旨に反するため許されない。
重要事実
建物収去土地明渡請求事件の裁判上の和解において、賃借期間を10年とする賃貸借契約が成立した。和解条項では、10年の期間経過とともに上告人が地上建物を収去して土地を明け渡すことが約されていた。上告人は、期間10年の定めは借地法11条(最短期間の制限等)に違反し無効であると主張した。
あてはめ
本件では、建物収去土地明渡請求の和解として成立した経緯があり、10年という期間設定も、その期間内に限り土地を賃貸借し、終了時には建物を収去して明け渡すという当事者双方の明確な合意に基づいている。このような成立の経緯および合意内容に照らせば、当事者には借地法の規定の適用を受ける意思がなく、短期間に限り存続させる客観的合理的な理由がある。したがって、本件契約は一時使用の賃貸借に該当するといえる。
結論
本件賃貸借は一時使用の賃貸借に該当するため、借地法11条の適用はなく、期間10年の定めおよび終了時の建物収去明渡しの特約は有効である。
実務上の射程
裁判上の和解であっても借地法の強行規定から当然に解放されるわけではないという原則を示しつつ、「一時使用」の認定において和解に至る経緯や建物の収去合意を重要な要素として考慮している。実務上、借地借家法25条の適用の有無を検討する際、契約の形式だけでなく成立の背景にある「客観的合理的な理由」を論証する枠組みとして活用できる。
事件番号: 昭和36(オ)1054 / 裁判年月日: 昭和38年5月21日 / 結論: 棄却
借地法第一七条の適用ある賃貸借契約に同法第一八条の適用がないとする根拠はない。