借地法九条にいう一時使用の賃貸借というためには、その期間は、少なくとも借地法自体が定める借地権の存続期間より相当短いものであることを要し、賃貸期間を二〇年とする土地賃貸借は、それが裁判上の和解によつて成立した等の事情があつたとしても、これを同条にいう一時使用の賃貸借ということはできない。
裁判上の和解により賃貸期間を二〇年と定めた土地の賃貸借と借地法九条にいう一時使用の賃貸借
借地法9条
判旨
借地法9条の一時使用目的の借地権に該当するためには、諸般の事情を考慮し、短期間に限り賃貸借を存続させる合意の客観的合理的理由が必要であり、借地法が定める存続期間に達するような長期のものはこれに当たらない。
問題の所在(論点)
賃貸借期間を20年とする契約が、借地法9条(現25条)の「一時使用のために借地権を設定したことが明らかであるとき」に該当し、強行規定の適用を免れることができるか。特に、借地法が定める存続期間と同程度の期間設定がなされている場合に一時使用性を認めることができるか。
規範
借地法9条(現借地借家法25条)にいう「一時使用の目的」による賃貸借に該当し、強行規定の適用が排除されるためには、土地の利用目的、地上建物の種類・設備・構造、賃貸期間等諸般の事情を考慮し、賃貸借当事者間に「短期間」に限り賃貸借を存続させる合意が成立したと認められる客観的合理的理由が存することを要する。ここでいう「短期間」とは、借地法が定める借地権の存続期間(堅固建物30年、非堅固建物20年)よりも相当短いものであることを意味し、これに達するような長期のものは、一時使用の賃貸借とはいえない。
重要事実
上告人と被上告人は、昭和23年10月、本件土地を昭和21年から20年間賃貸し、期間満了と同時に明け渡す旨の裁判上の和解を成立させた。原審は、約定期限後は更新しないことが特に約定された点や契約締結前後の事情を重く見て、本件賃貸借は借地法9条の一時使用の目的を持つ賃貸借であると認定し、更新規定等の適用を否定した。これに対し、上告人がその解釈の誤りを主張して上告した。
あてはめ
本件における賃貸借期間は20年と定められており、これは当時の借地法が非堅固建物の存続期間として定める20年に相当する長期のものである。借地法が認める本来の長期間の賃貸借について、事前の合意により更新等の規定を排除できるとすれば、同法11条(現33条等)の強行規定性を不当に免れる結果となる。したがって、本件のように期間が20年におよぶ場合、裁判上の和解による定めであることや契約前後の諸事情を考慮したとしても、それらの事情のみから直ちに一時使用のためのものと断ずることはできない。
結論
本件賃貸借は「一時使用の目的」によるものとは認められず、借地法9条の適用を認めた原判決には法令の解釈適用の誤りがある。原判決を破棄し、差し戻す。
実務上の射程
現行の借地借家法25条の解釈においても基本となる判例である。一時使用の主張をするにあたっては、建物の構造(仮設性等)や利用目的の臨時性だけでなく、契約期間が法定期間と比較して「相当短い」ことが必須の要件となる。本判例は、法定期間と同程度の期間を設定しながら一時使用の特約を設ける潜脱的行為を厳しく制限している。
事件番号: 昭和42(オ)666 / 裁判年月日: 昭和43年3月28日 / 結論: 棄却
裁判上の和解により成立した土地賃貸借についても、土地の利用目的、地上建物の種類、設備、構造、賃貸期間等諸般の事情から、賃貸借当事者間に短期間にかぎり賃貸借を存続させる合意が成立したと認められる場合には、右賃貸借は、借地法第九条にいう一時使用の賃貸借に該当し、同法第一一条の適用を受けないと解すべきである。