一 農地調整法第九条第二項但書の場合に該当する賃貸借は、期間の満了により当然に終了し、更新拒絶に関する同条第一項及び第三項の規定は、これに適用がない。 二 農地の賃貸借の期間満了前賃貸人から申し立てた小作継続に関する調停手続において、賃借人は賃貸人の自作を相当と認めたが、賃貸人の譲歩により一年間に限り賃借することとなり、右期間が到来したときは事情の如何にかかわらず当該農地を返還することを約し、かつ、以上の趣旨が調停条項にもうたわれた場合においては、右賃貸借は、農地調整法第九条第二項但書にいわゆる「特別ノ事由ニ因リテ一時賃貸借ヲ為シタルコト明ナル場合」に該当する。
一 農地調整法第九条第二項但書にいわゆる「特別ノ事由ニ因リテ一時賃貸借ヲ為シタルコト明ナル場合」と同条第一項及び第三項の適用の有無。 二 農地調整法第九条二項但書にいわゆる「特別ノ事由ニ因リテ一時賃貸借ヲ為シタルコト明ナル場合」。
農地調整法9条
判旨
農地調整法における「特別の事由により一時賃貸借をしたことが明らかな場合」に該当する農地賃貸借については、法定更新の規定が適用されないため、更新拒絶に際し行政庁の許可等を要さず期間満了により当然に終了する。
問題の所在(論点)
調停により成立した「1年間を限度とする農地賃貸借」が農地調整法9条2項但書の一時賃貸借に該当するか。また、その場合に更新拒絶に関する行政庁の許可規定(同条3項等)の適用を受けるか。
規範
農地調整法9条2項但書にいう「特別ノ事由ニ因リテ一時賃貸借ヲ為シタルコト明ナル場合」に該当する賃貸借には、法定更新に関する同条同項本文の適用がない。したがって、かかる賃貸借は予め更新拒絶の通知を要さず期間満了により当然に終了し、更新拒絶に関する行政庁の承認や許可(同条1項・3項)も不要である。
重要事実
賃貸人(被上告人)が昭和18年12月に期間2年で農地を賃貸したが、期間満了前に賃借人(上告人)が小作継続の調停を申し立てた。その結果、昭和20年12月に「期間を1年に限定する」「期限到来時は事情の如何を問わず返還する」「賃貸人の自作を相当と認める」旨の調停が成立した。その後、農地調整法の改正により更新拒絶に許可を要する旨の規定が新設されたが、本件農地返還に際し地方長官の許可は得られていなかった。
あてはめ
本件賃貸借は、当初の期間満了を控えた調停において、賃貸人の譲歩により特に「1年間を限る」ことや「事情の如何を問わず返還する」ことが明記されたものである。このような経緯と条項に照らせば、同法9条2項但書にいう「特別の事由により一時賃貸借をしたことが明らか」といえる。この場合、同条3項等の更新拒絶に関する制限(市町村農地委員会の承認や地方長官の許可)は、賃貸借の性質上適用されない。したがって、許可を欠いていても賃貸借の終了に影響はなく、調書の債務名義としての効力も妨げられない。
結論
本件賃貸借は一時賃貸借に該当し、期間満了により当然に終了するため、地方長官の許可がなくても返還を求めることができる。
実務上の射程
農地法(現行17条・18条)における「一時賃貸借」の判断基準および法定更新制限の射程を示す。特に、紛争解決の過程(調停等)で返還合意がなされた場合の「一時性」の認定において、合意の文言や背景事情を重視する実務上の指針となる。
事件番号: 昭和26(オ)257 / 裁判年月日: 昭和34年3月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】農地法(旧農地調整法)上の「一時賃貸借」に該当する場合、賃貸借の解約等について知事の許可を要せず、便宜的になされた許可における正当事由の有無も問題とならない。 第1 事案の概要:農地の賃借人と賃貸人の間において、当該賃貸借契約が一時的なものであると認定された事案。知事は便宜的に当該賃貸借に関する許…