期間の定めない農地の一事賃貸借の解約申入には、地方長官の許可を要する。
農地の一時賃貸借の解約申入と地方長官の許可の要否
農地調整法(昭和22年法律240号による改正前のもの)9条
判旨
農地の賃貸借が農地調整法9条2項但書に定める「一時賃貸借」に該当する場合であっても、期間の定めのない賃貸借の解約申入れをする際には、同条3項(改正後の規定を含む)に基づく都道府県知事等の許可を要する。
問題の所在(論点)
農地調整法9条2項但書に規定される「一時賃貸借」に該当する場合、同法9条3項(解約申入れの許可制)の適用が排除されるか、すなわち行政庁の許可なく解約申入れができるかが問題となる。
規範
農地調整法上の「一時賃貸借」とは、更新の拒絶に関する制限が緩和されるにとどまるものであり、解約の申入れに関する制限を免除するものではない。したがって、一時賃貸借であっても、農地の解約申入れについては、法が定める行政庁の許可を欠く限り、その効力を生じない。
重要事実
農地の賃貸人である被上告人が、昭和22年6月、賃借人に対し期間の定めのない賃貸借契約の解約申入れを行った。当該賃貸借は、賃貸人の疾病等により一時的に貸し出された「一時賃貸借」に該当するものであったが、被上告人はこの解約申入れに際し、当時の農地調整法9条3項が規定する行政庁(地方長官/都道府県知事)の許可を得ていなかった。
あてはめ
農地調整法の精神および条文の文理に照らせば、一時賃貸借において緩和されるのは更新拒絶の制限(同法9条2項)のみであり、解約申入れの許可制(同条3項)とは無関係である。本件では、一時賃貸借である事実は認められるものの、被上告人は解約申入れについて行政庁の許可を受けていないことを自認している。したがって、当該解約申入れは法定の要件を欠き、無効であると評価される。
結論
一時賃貸借であっても行政庁の許可を欠く解約申入れは無効であり、これを前提とした土地明渡請求等の請求は認められない。
実務上の射程
農地法(現行法18条等)下における解約制限の議論の端緒となる判例であり、一時的な利用目的であっても法定の解約手続を潜脱できないことを示す。答案上は、農地の賃貸借における解約の有効性を論じる際、一時賃貸借という事実が解約手続(許可の要否)に直接影響しないことを指摘する文脈で使用する。
事件番号: 昭和38(オ)239 / 裁判年月日: 昭和39年10月16日 / 結論: 棄却
農地の賃貸借について更新しない旨の通知を発し、または解約の申入をする場合には、右通知または申入の効力の有無が訴訟上問題となるときであると否とを問わず、知事の許可を必要とし、右許可を得ないでした右通知または申入はその効力を生じないものと解すべきである。
事件番号: 昭和37(オ)218 / 裁判年月日: 昭和38年5月10日 / 結論: 棄却
農地賃貸借解除の意思表示は、裁判上なされる場合でも、知事の許可を受けていない以上、農地法第二〇条により無効と解する。