判旨
農地の賃貸借が一時賃貸借と認められる場合には、農地調整法(昭和24年改正前)の解約制限等の規定は適用されず、知事の許可や更新拒絶の手続を経ることなく期間満了により終了する。
問題の所在(論点)
農地調整法9条2項但書にいう「一時賃貸借」に該当する場合、農地の返還を受けるにあたって、同条が定める解約・更新拒絶の手続や知事の許可を要するか。
規範
農地法理における「一時賃貸借」に該当する契約については、農地調整法9条2項但書に基づき、同条本文の適用が排除される。これにより、同条1項(解約等の制限)および3項(知事の許可)の適用もなく、賃貸人は期間満了後に解約申入や更新拒絶の手続、さらには知事の許可を要さずに、当然に返還を請求し得る。
重要事実
賃借人(上告人)は、昭和22年3月、賃貸人(訴外D)から本件農地を昭和23年3月末日までの1年間を期限として借り受けた。この賃貸借は、賃借人側の強い希望を容れて短期間に限って合意されたものであったが、賃借人は期限経過後も農地を返還しなかった。その後、知事による解約許可等の手続が行われたが、これが有効な終了要件として必要か否かが争点となった。
あてはめ
本件では、当初から1年間という極めて短期間の期限が定められており、賃借人の希望を容れる形で成立したという経緯に照らせば、一時賃貸借であると解するのが相当である。一時賃貸借である以上、農地調整法の解約制限規定は適用されない。したがって、知事が念のために行った解約許可は法律上不要な行為であり、その許可の法的性質(更新拒絶の許可か否か等)が原審で議論されたとしても、結論に影響を及ぼさない。
結論
本件農地の賃貸借は一時賃貸借にあたり、期間満了によって当然に終了する。したがって、知事の許可等を要さずに賃貸人は返還を求めることができる。
事件番号: 昭和28(オ)841 / 裁判年月日: 昭和32年3月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】建物賃貸借において、その契約が一時使用を目的とするものであると認められる場合には、借地借家法(旧借家法)の更新拒絶に関する正当事由等の規定は適用されない。 第1 事案の概要:上告人(賃借人)と被上告人(賃受人)との間において、建物の賃貸借契約が締結されていたが、原審はその成立経緯や判示の諸事情を考…
実務上の射程
農地調整法(現行農地法17条・18条相当)の強行規定性の例外を画する射程を持つ。答案上は、期間の定めの短さや合意の経緯から「一時賃貸借」と評価される場合、法定更新や解約制限の適用が排除されるという論理構成で活用できる。知事の許可が不要な場合でも、念のためなされた許可は単なる確認的意味にすぎないとする実務的処理も示唆している。
事件番号: 昭和36(オ)1137 / 裁判年月日: 昭和38年3月15日 / 結論: 棄却
右改正前の合意による小作契約解約は、知事の許可がなくても有効である。