右改正前の合意による小作契約解約は、知事の許可がなくても有効である。
昭和二四年法律第二四〇号による農地調整法改正前において知事の許可を受けないでした合意による小作契約解約の効力。
農地調整法(昭和24年法律240号による改正前)9条
判旨
昭和22年法律第240号による改正前の農地調整法9条1項において、農地賃貸借の解除等に知事等の許可を要するとされていた規定は、合意解約には適用されない。
問題の所在(論点)
昭和21年法律第42号による改正後、かつ昭和22年法律第240号による改正前の農地調整法下において、農地賃貸借の「合意解約」に知事等の許可が必要か、また許可がない場合の効力はどうなるか。
規範
昭和21年法律第42号による改正後の農地調整法9条1項(及び附則による読み替え規定)に基づき、農地賃貸借の解除、解約、更新拒絶に知事等の許可を要し、これを受けない行為は無効とされるが、同条の「解約」に「合意解約」が含まれる旨が明文化されたのは昭和22年法律第240号による改正以降である。したがって、それ以前の合意解約については、知事等の許可は効力発生要件ではない。
重要事実
訴外Dは、訴外Eから本件農地の返還を受けるにあたり、Eに対して要請を行い、昭和21年秋頃にその返還を受けた。上告人は、この返還(解約)が昭和21年法律第42号による改正法(農地調整法)の施行後であれば、知事の許可がない限り無効であり、その後に当該農地を耕作し始めた被上告人は正当な小作権を有しないと主張して、返還時期の確定が不十分であることを理由に原判決の違法を訴えた。
あてはめ
本件における農地の返還は、DがEに要請して行われたものであり、その実態は賃貸借契約の合意解約であると認められる。当該返還時期が昭和21年秋である場合、当時の農地調整法9条には「合意解約を含む」との規定は存在しなかった。法が合意解約を許可対象として明示したのは昭和22年改正時であるため、本件の合意解約に知事の許可は不要である。したがって、返還時期が昭和21年法律第42号の施行前後いずれであっても、許可の有無により解約の効力が左右されることはない。
結論
昭和21年法律第42号施行後の合意解約であっても知事の許可は不要であり、返還の効力は認められる。したがって、返還時期を厳密に特定せずとも結論に影響はなく、被上告人の耕作を正当とした判断に違法はない。
実務上の射程
農地法(旧農地調整法)の変遷に関する歴史的事案であるが、現在の農地法18条1項が合意解約についても原則として知事等の許可を要すると明記している点と比較し、法の改正過程における規定の射程を理解する資料となる。行政規制の効力規定としての解釈において、文言の変遷が重要視されることを示す一例である。
事件番号: 昭和25(オ)242 / 裁判年月日: 昭和26年5月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】賃貸借契約の合意解約が成立したと認めるためには、当事者間の合意という事実認定が必要であり、単に一方が他方の不知の間に耕作を開始した等の事実だけでは解約の成立を基礎付けることはできない。 第1 事案の概要:上告人は、小作人Dとの間で農地の賃貸借契約を締結していた。上告人は、Dとの間で離作料の支払いや…