判旨
賃貸借契約の合意解約が成立したと認めるためには、当事者間の合意という事実認定が必要であり、単に一方が他方の不知の間に耕作を開始した等の事実だけでは解約の成立を基礎付けることはできない。
問題の所在(論点)
農地の賃貸借関係において、賃貸人による一方的な耕作開始や、合意解約を前提とした書面の存在がある場合に、民法上の合意解約(541条等参照)の成立が認められるか。
規範
契約の合意解約が成立したか否かは、当事者の意思表示の合致という客観的事実に基づき判断される。証拠上、解約の合意を推認させるに足りる明確な事実が認定されない限り、単なる現状の変更(耕作の開始等)をもって合意解約の成立を認めることはできない。
重要事実
上告人は、小作人Dとの間で農地の賃貸借契約を締結していた。上告人は、Dとの間で離作料の支払いや合意解約が成立したと主張し、昭和21年9月下旬に当該田にゲンゲを播種し、同年11月以降自ら耕作していた事実を根拠に、合意解約による自作地化を主張した。しかし、原審ではDの同意を得た事実や、合意解約の存在を直接証明する証拠が認められなかった。
あてはめ
上告人はDが知らない間にゲンゲの種子をまいており、Dの明示的な同意があったとは認められない。また、上告人が提出した証拠(甲第4号証)は、Dの同意を得た代替耕地を提供した場合には耕作を譲るという条件付の趣旨を含むものであったが、実際にその条件が成就した事実は認定されていない。したがって、昭和22年時点で上告人が現に耕作していたとしても、それは合意解約に基づく正当な権原によるものとは評価できない。
結論
本件賃貸借契約が合意により解約された事実は認められず、上告人の主張は理由がないとして上告を棄却する。
実務上の射程
事実認定のレベルで合意解約の存否を争う際の基準を示す。特に農地のように公法上の規制(農地改革等)が背景にある場合、単なる事実上の占有・耕作の開始をもって合意解約を擬制することはできず、厳格に合意の存否を確定すべきという実務上の指針となる。
事件番号: 昭和34(オ)46 / 裁判年月日: 昭和35年11月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】農地の所有権移転に関する調停や和解が成立した場合であっても、農地法上の許可等がない限り、当然に所有権移転の効力が生じるものではない。 第1 事案の概要:上告人は、債務の弁済期経過に伴い本件農地を債権者Eに代物弁済する合意をしていた。その後、上告人とEの間で、一度Eに移転した所有権を再び上告人に戻す…