昭和二一年法律第四二号施行以前においては、市町村農地委員会の承認を受けないで農地賃貸借契約を解約しても、その解約は無効ではない。
昭和二一年法律第四二号施行以前において市町村農地委員会の承認を受けないでした農地賃貸借契約解約の効力
農地調整法9条3項5号
判旨
農地の解約において、賃貸人に飯米確保(自給)の目的があったとしても、保有米制度の趣旨に照らせば、その一事をもって解約が無効または公序良俗違反となることはない。解約が適法かつ正当であるかは、当事者の家族数、農業経営能力、生活状態等を総合的に考量して判断すべきである。
問題の所在(論点)
1. 自給用米の確保を目的とした農地賃貸借の解約は、公序良俗に反し無効となるか。 2. 農地賃貸借の合意解約が適法かつ正当であるかは、どのような要素によって判断されるべきか。
規範
農地賃貸借の解約等の正当性の判断にあたっては、賃貸人・賃借人双方の家族員数、農業経営能力、施設、耕作面積、増産見込み、および生活状態等を総合的に考量すべきである。また、現行制度が農家に保有米を認めている趣旨に鑑み、自らの食生活を維持するための自作(飯米確保)を目的とした解約であっても、直ちに無効または公序良俗に反するものとは解されない。
重要事実
賃貸人(被上告人)は、自給用米(飯米)の確保などを目的として、賃借人D(上告人等の前主)との間で本件農地の賃貸借契約を合意解約した。Dは、本件農地を返還することを理由に、自らが他者(E)に貸付けていた別の農地の返還を受けていた。しかし、後にD側は、本件解約が飯米確保目的であり公序良俗に反すること、および農地委員会の承認を欠くこと等を理由に、解約の無効を主張して争った。
あてはめ
被上告人(賃貸人)の目的が飯米確保にあったとしても、保有米制度が認められている以上、不当な目的とはいえない。また、原審が認定した被上告人とD双方の家族数や経営能力、生活状態等の諸要素を比較すると、本件農地を返還してもDの生活維持に困難が生じる一方、被上告人は返還を受けなければ生活状態が悪化すると認められる。さらに、Dは本件農地の返還を前提に自己所有地の返還を他から受けており、本件解約の効力を争うことは信義則上も問題がある。
結論
本件解約は農地調整法上の正当な事由を具備しており、有効である。したがって、上告人の請求は棄却される。
実務上の射程
農地の返還を求める「正当事由」の判断枠組みとして、当事者双方の具体的諸事情を比較衡量する相対的判断手法を示したもの。旧農地調整法下の判決であるが、現行農地法における解約制限(農地法18条)の正当事由判断において、当事者の生活の困窮度や経営能力を総合考慮する実務の先駆けといえる。
事件番号: 昭和26(オ)664 / 裁判年月日: 昭和28年7月3日 / 結論: 破棄差戻
地主の妻が小作人に農地の返還を求め、小作人が替地を要求したところ、地主の妻が「帰つて相談しておこう、或はまたもとのように此の田をあんたに代つて貰うことになるかも知らぬが、とにかく今年は返してくれ」と懇請したので、小作人がこれを承諾して右農地を返還した場合は、右の事実だけでは、右合意解約を、自作農創設特別措置法第六条の二…