判旨
農地の賃貸借の解約について、調停による合意解約がなされ、かつ賃借人に小作料の滞納等の事情がある場合には、旧自作農創設特別措置法附則3条2項2号にいう解約の適法性および正当性が認められる。
問題の所在(論点)
旧自作農創設特別措置法(昭和22年法律240号)附則3条2項2号に規定される農地賃貸借の解約が、「適法且つ正当」といえるか。特に、調停による解約合意と小作料の滞納事実がその判断にどう影響するか。
規範
農地の賃貸借の解約が、当時の自作農創設特別措置法等の法令に基づき「適法かつ正当」と認められるためには、当事者間の合意(調停等)の存否のみならず、賃借人側の債務不履行(小作料の滞納等)や賃貸借継続を困難とする客観的な諸事情を総合的に考慮して判断すべきである。
重要事実
上告人と被上告人(または訴外人)との間における係争田地の賃貸借について、調停による解約合意が成立した。しかし、上告人側はこの解約の適法性を争った。原審の認定によれば、当該賃貸借において賃借人による小作料の支払は従前から滞納しがちであったという事実が存在していた。
あてはめ
本件では、まず賃貸借の解約が「調停」という公的な手続を経て合意されており、適法に行われたものと推定される。加えて、賃借人側において小作料の支払が滞納しがちであったという債務不履行に近い事実が認められる。これらの事情に加え、上告人側から解約の適法性・正当性を否定するに足りる反証がなされていない以上、当該解約は同法附則の要件を充足すると評価される。
結論
本件賃貸借の解約は適法かつ正当であり、原判決の判断に違法はない。したがって、本件上告は棄却される。
実務上の射程
農地法等の特別法が介在する賃貸借関係において、単なる合意のみならず、賃料滞納等の実態的理由を併せて考慮して「正当性」を判断する枠組みを示している。民法上の信頼関係破壊の理屈を、当時の農地解放法制下で具体化させた事例として位置づけられる。
事件番号: 昭和26(オ)664 / 裁判年月日: 昭和28年7月3日 / 結論: 破棄差戻
地主の妻が小作人に農地の返還を求め、小作人が替地を要求したところ、地主の妻が「帰つて相談しておこう、或はまたもとのように此の田をあんたに代つて貰うことになるかも知らぬが、とにかく今年は返してくれ」と懇請したので、小作人がこれを承諾して右農地を返還した場合は、右の事実だけでは、右合意解約を、自作農創設特別措置法第六条の二…