判旨
農地法(旧農地調整法)上の「一時賃貸借」に該当する場合、賃貸借の解約等について知事の許可を要せず、便宜的になされた許可における正当事由の有無も問題とならない。
問題の所在(論点)
農地調整法(旧法)9条2項但書にいう「一時賃貸借」に該当する場合、知事の許可の要否およびその許可に係る正当事由の存否が法的効力に影響を及ぼすか。
規範
農地等の賃貸借が一時的なもの(一時賃貸借)と認められる場合には、農地調整法(現行農地法)に基づく知事の許可等の制限規定は適用されない。また、一時賃貸借において便宜的になされた知事の許可については、その有効性や正当事由の有無を検討する必要はない。
重要事実
農地の賃借人と賃貸人の間において、当該賃貸借契約が一時的なものであると認定された事案。知事は便宜的に当該賃貸借に関する許可を与えていたが、上告人はその許可に正当な事由が欠けている旨を主張して、賃貸借の継続や解約の効力を争った。
あてはめ
本件賃貸借は、その性質上、一時的な利用を目的とする「一時賃貸借」に該当すると認められる。一時賃貸借である以上、知事による解約等の許可は本来不要なものである。したがって、実務上の便宜からなされた知事の許可に、いわゆる「正当の事由」があったか否かは、当該賃貸借の法律関係を左右するものではなく、判断の対象とするに値しない。
結論
本件賃貸借は一時賃貸借に該当するため、知事の許可における正当事由の有無にかかわらず、原審の判断は正当であり、上告を棄却する。
実務上の射程
農地法上の制限を回避しようとする脱法的な賃貸借ではなく、客観的事態に即して「一時賃貸借」と評価される場合には、農地法による解約制限(正当事由の必要性)の適用外となることを示す。答案上は、一時賃貸借の該当性を認定した後の論理的帰結として活用できる。
事件番号: 昭和26(オ)384 / 裁判年月日: 昭和27年11月7日 / 結論: 棄却
昭和二二年法律第二四〇号による農地調整法改正前においては、農地賃貸借の合意解約について、同法第九条第三項による知事の許可を要しない。
事件番号: 昭和28(オ)841 / 裁判年月日: 昭和32年3月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】建物賃貸借において、その契約が一時使用を目的とするものであると認められる場合には、借地借家法(旧借家法)の更新拒絶に関する正当事由等の規定は適用されない。 第1 事案の概要:上告人(賃借人)と被上告人(賃受人)との間において、建物の賃貸借契約が締結されていたが、原審はその成立経緯や判示の諸事情を考…
事件番号: 昭和36(オ)1155 / 裁判年月日: 昭和37年7月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】賃貸借契約における賃借人の債務不履行を理由とする解除が認められるためには、単なる履行遅滞のみでは足りず、その不履行が賃貸人と賃借人との間の信頼関係を破壊し、契約の継続を困難にする程度に至っていることを要する。 第1 事案の概要:上告人(賃貸人)は、訴外D(賃借人)が小作料を支払わなかったことを理由…
事件番号: 昭和33(オ)115 / 裁判年月日: 昭和34年7月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】農地法に基づく賃貸借の解約等の許可申請に対し、賃貸人の耕作能力や生活状況、賃借人の事情、農業生産への影響等を総合的に考慮し、解約拒否を不相当とした知事の判断は適法である。 第1 事案の概要:被上告人(賃貸人)は専業農家であり、生計維持のために本件農地の返還を求めていた。被上告人の養子は、本件農地が…