昭和二二年法律第二四〇号による農地調整法改正前においては、農地賃貸借の合意解約について、同法第九条第三項による知事の許可を要しない。
昭和二二年法律第二四〇号による農地調整法改正前における農地賃貸借の合意解約と同法第九条第三項による知事の許可の要否
農地調整法(昭和22年法律第240号による改正前のもの)9条3項,昭和21年法律42号附則3項
判旨
昭和22年改正前の農地調整法9条3項にいう賃貸借の「解除」または「解約」には、当事者の合意による解約は含まれない。したがって、同改正法施行前になされた農地の賃貸借の合意解約については、地方長官(知事)の許可を要しない。
問題の所在(論点)
昭和22年改正前の農地調整法9条3項において、農地の賃貸借の「解除若は解約」に地方長官の許可を要すると規定されていたが、この「解除若は解約」に「合意解約」が含まれるか。改正法施行前に成立した合意解約の効力が許可の有無によって左右されるかが問題となった。
規範
「解除」または「解約」とは、本来、当事者の一方的意思表示によって契約を遡及的または将来に向かって解消させることを指す。したがって、文言上、当事者の合意によって契約を解消させる「合意解約」はこれに含まれないと解するのが私法上の原則および文言解釈に合致する。
重要事実
被上告人と訴外Dとの間で、本件農地一町歩について農地の賃貸借を解消する旨の合意が成立した。この合意解約がなされたのは昭和22年2月25日であり、農地の賃貸借の合意解約にも許可を要すると明文化した昭和22年12月26日の農地調整法改正法が施行される前の出来事であった。
事件番号: 昭和26(オ)257 / 裁判年月日: 昭和34年3月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】農地法(旧農地調整法)上の「一時賃貸借」に該当する場合、賃貸借の解約等について知事の許可を要せず、便宜的になされた許可における正当事由の有無も問題とならない。 第1 事案の概要:農地の賃借人と賃貸人の間において、当該賃貸借契約が一時的なものであると認定された事案。知事は便宜的に当該賃貸借に関する許…
あてはめ
本件における合意解約は昭和22年2月に成立しており、適用されるのは同22年12月改正前の農地調整法である。同条項にいう「解除若は解約」は一方的意思表示によるものを指し、合意解約を含まない。本件の契約解消は当事者間の合意に基づくものであるから、当時の規定が定める許可を要する行為には該当しない。後出の改正法により合意解約も許可制の対象とされたが、本件成立時にはその適用はない。
結論
本件農地の合意解約について、地方長官の許可は不要である。したがって、当該合意解約は有効に成立する。
実務上の射程
行政法規による私法上の法律行為の制限を解釈する際、法改正によって規制対象が拡大された場合、改正前の文言を厳格に解釈し、私的自治の原則を優先する姿勢を示す。一方的意思表示である「解除」と合意による「合意解約」を区別する基本的法理として、契約法全般の論述において参照し得る。
事件番号: 昭和24(オ)297 / 裁判年月日: 昭和28年12月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】昭和21年改正当時の農地調整法下において、農地賃貸借の合意解除は、市町村農地委員会の承認を要せず、正当事由等の制限も受けない。 第1 事案の概要:農地の賃貸借契約に関し、昭和21年5月31日、貸主(被上告人)と借主(上告人)の間で当該契約を終了させる旨の合意がなされた。これに対し借主側は、当時の農…
事件番号: 昭和39(行ツ)49 / 裁判年月日: 昭和41年2月22日 / 結論: 棄却
農地法第二〇条第一項にいう賃貸借の合意による解約とは、賃貸借解消の効果が将来に向つてのみ発生する場合であると、その効果が遡及的に発生する場合であるとを問わず、賃貸借関係の解消が当事者双方の合意に基づく場合を指すものと解すべきである。
事件番号: 昭和26(オ)452 / 裁判年月日: 昭和28年9月4日 / 結論: 棄却
知事が農地調整法第九条第三項によつて農地賃貸借解約を許可した後は、許可申請書に事実にあわない記載があり、錯誤によつて許可したものとしても申請者側に詐欺等の不正行為があつたことが顕著でない限り、それだけの理由で、さきの許可処分を取り消すことはできない。