判旨
昭和21年改正当時の農地調整法下において、農地賃貸借の合意解除は、市町村農地委員会の承認を要せず、正当事由等の制限も受けない。
問題の所在(論点)
旧農地調整法9条1項および3項による賃貸借解約の制限(行政庁の承認等)が、当事者間の「合意解除」にも適用されるか、また合意解除の有効性が正当事由や意思表示の瑕疵によって左右されるか。
規範
農地調整法(昭和20年法律64号の第一次改正後)9条1項および3項は、賃貸借の解約(一方的な解約申入れ)については制限を加え、行政庁(市町村農地委員会)の承認を必要としている。しかし、賃貸借の両当事者の自由な意思に基づく「合意解除」については、同法の文理上、特段の制限を加えておらず、委員会の承認を要する旨の規定も存在しないと解するのが相当である。
重要事実
農地の賃貸借契約に関し、昭和21年5月31日、貸主(被上告人)と借主(上告人)の間で当該契約を終了させる旨の合意がなされた。これに対し借主側は、当時の農地調整法9条に基づき、農地委員会の承認がないことや正当事由が欠けていること、また当該合意は貸主の強要によるものであることを理由に、合意解除の無効を主張して争った。
あてはめ
本件における賃貸借の終了原因は当事者間の合意解除である。合意解除は法の予定する「解約の申入れ」とは性質を異にするため、農地委員会の承認は不要である。また、原審が確定した事実によれば、本件合意は貸主の強要によるものではなく、その内容も正当と認められる。したがって、法的な制限に抵触する事情は認められない。
結論
本件農地賃貸借の合意解除は適法かつ有効である。したがって、上告人の主張は認められず、上告を棄却する。
実務上の射程
事件番号: 昭和26(オ)384 / 裁判年月日: 昭和27年11月7日 / 結論: 棄却
昭和二二年法律第二四〇号による農地調整法改正前においては、農地賃貸借の合意解約について、同法第九条第三項による知事の許可を要しない。
本判決は旧法下の判断であるが、強行法規による解約制限が及ぶ範囲を「一方的解約」に限定し、「合意解除」を原則として私的自治の範囲内と捉える基本的な考え方を示している。ただし、現行法(農地法18条)では合意解除であっても原則として都道府県知事等の許可を要するよう明文化されており、実務上は現行法の規定が優先される点に留意が必要である。
事件番号: 昭和24(オ)333 / 裁判年月日: 昭和28年12月24日 / 結論: 棄却
行政事件訴訟特例法第九条は、裁判所が、証拠につき充分の心証を得られない場合、職権で、証拠を調べることができる旨を規定したのであつて、裁判所は、証拠につき十分の心証を得られる以上、職権によつてさらに証拠を調べる必要はない。
事件番号: 昭和26(オ)257 / 裁判年月日: 昭和34年3月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】農地法(旧農地調整法)上の「一時賃貸借」に該当する場合、賃貸借の解約等について知事の許可を要せず、便宜的になされた許可における正当事由の有無も問題とならない。 第1 事案の概要:農地の賃借人と賃貸人の間において、当該賃貸借契約が一時的なものであると認定された事案。知事は便宜的に当該賃貸借に関する許…
事件番号: 昭和25(オ)221 / 裁判年月日: 昭和28年2月24日 / 結論: その他
昭和二二年法律第二四一号による自作農創設特別措置法改正後の同法第六条の二第二項各号に該当する場合は、右改正前の同法附則第二項による農地買収計画も違法である。