行政事件訴訟特例法第九条は、裁判所が、証拠につき充分の心証を得られない場合、職権で、証拠を調べることができる旨を規定したのであつて、裁判所は、証拠につき十分の心証を得られる以上、職権によつてさらに証拠を調べる必要はない。
行政事件訴訟特例法第九条の趣旨
行政事件訴訟特例法9条
判旨
農地の賃貸借の合意解約において、当時の農地調整法9条3項に基づく農地委員会への通知は効力発生要件ではなく、通知の有無は解約の効力に影響を及ぼさない。また、自作農創設特別措置法上の「耕作の業務を営む者」とは、専業農家に限らず、耕作の結果が経済的に直接帰属する経営主を指すと解するのが相当である。
問題の所在(論点)
1. 農地調整法9条3項の通知の有無が、農地賃貸借の合意解約の私法上の効力に影響を及ぼすか。 2. 司法書士を本業とする者が、自作農創設特別措置法上の「耕作の業務を営む者」に該当し、当該農地が「自作地」と認められるか。
規範
1. 農地調整法(昭和20年当時)9条3項に定める農地委員会への通知は、農地の賃貸借の合意解約の効力に影響を及ぼすものではない。 2. 自作農創設特別措置法2条の「耕作の業務を営む者」とは、必ずしも耕作を専業とする者に限られず、耕作の結果が経済的に直接帰属する経営主を指す。
重要事実
賃貸人(被上告人、司法書士)と賃借人(小作人E)との間で、昭和20年10月末に農地の賃貸借を解約する合意がなされた。賃貸人は昭和21年度以降、当該農地を自ら耕作していた。これに対し、上告人は(1)農地委員会への通知がないため解約は無効である、(2)賃貸人は司法書士であり「耕作の業務を営む者」にあたらないため、当該地は「自作地」とは認められない、等と主張して争った。
あてはめ
1. 昭和20年当時の農地調整法9条3項は、農地の管理を目的とする行政上の規定であり、通知は合意解約という私法上の法律行為の効力を左右する要件ではないと解される。 2. 被上告人は司法書士を職業としているが、農地の返還を受けた後、現実に耕作を行っており、その耕作による利益が直接本人に帰属している以上、経営主として「耕作の業務を営む者」に該当する。したがって、当該農地は被上告人の「自作地」と認定するのが相当である。
結論
農地の合意解約は通知の有無にかかわらず有効であり、また、賃貸人が兼業であっても現実に経営主として耕作している以上、当該農地は自作地として認められる。
実務上の射程
農地法改正前の事案であるが、行政上の届出・通知の欠如が直ちに私法上の契約効力を否定しないという法理、および「耕作」の定義を形式的な職業区分ではなく経済的帰属(経営主体性)から判断する実務的指針を示す。答案上は、農地法等の行政法規違反と私法上の効力の切り分け、および農地法上の「耕作」の定義を論じる際の参照となる。
事件番号: 昭和24(オ)264 / 裁判年月日: 昭和28年4月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】農地調整法に基づく土地引上許可において、地主の自作を相当とする事情があり、かつ賃借人の生活維持に支障がない等の要件を満たす場合は、当該許可は適法である。 第1 事案の概要:地主Dは、昭和21年11月に本件農地の契約更新拒絶を通知した。その後、第二次農地調整法改正により地方長官(県知事)の許可が有効…
事件番号: 昭和27(オ)1064 / 裁判年月日: 昭和29年3月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】自作農創設特別措置法に基づく買収農地の売渡相手の選定は、農業委員会の自由な裁量に委ねられており、その行使が著しく不合理でない限り適法である。 第1 事案の概要:上告人は、本件農地を含む土地を50万円で買い受けた実態があったが、農業委員会は本件農地の売渡計画において、上告人以外の第三者を売渡の相手方…