昭和二二年法律第二四〇号農地調整法改正法附則第三条第七項による賃借権設定の裁定に、賃借権の内容条件を定めてないときは、特別の事情のないかぎり、前の賃借権と同一の内容条件において裁定のあつたものと認むべきである。
賃借権の内容条件を定めていない昭和二二年法律第二四〇号農地調整法改正法附則第三条第七項による賃借権設定裁定の効力
昭和22年法律240号農地調整法改正法附則3条
判旨
農地調整法改正法附則3条2項2号にいう「正当になされたもの」とは、単に解約が法律上適法であるのみならず、耕作者の生活維持の観点から実質的に正当であることを要する。また、賃借権設定裁定書に内容条件の記載がなくても、特段の事情がない限り、従前の契約と同一条件で設定されるものと解される。
問題の所在(論点)
1. 農地調整法改正法附則3条2項2号にいう解約の「正当」性の判断基準。2. 賃借権設定裁定書に賃借権の内容条件(賃料等)の記載がないことが、当該裁定を違法とする事由になるか。
規範
1. 農地調整法改正法附則3条2項2号の「正当になされたもの」という要件は、形式的に解約が適法であることのみでは足りず、賃貸人と賃借人双方の農業従事者の数、耕作反別、賃借人の生活維持の必要性等を総合考慮し、社会通念上正当と認められる実質的理由があることを要する。2. 賃借権設定裁定において、裁定書に具体的な賃借権の内容条件の記載がない場合であっても、法の立法趣旨に照らし、特段の定めがない限りは従前の賃貸借契約と同一の条件をもって設定する趣旨と解するのが相当である。
重要事実
上告人(地主)と訴外D(小作人)との間には、昭和10年頃から本件農地に関する賃貸借契約が存在していた。昭和21年6月に当該契約は合意解約されたが、Dは本件農地を失うと生活維持の手段を失う危険があった。被上告人(行政庁)は、農地調整法に基づき賃借権設定裁定を行った。これに対し上告人は、解約は適法かつ正当であり、また裁定書に賃借権の具体的条件の記載がないため違法であると主張して争った。
あてはめ
1. 本件では、上告人とDの家族の農業従事者数および耕作反別が比較検討された。Dは長年本件農地を賃借しており、これを失うことが生活の困窮に直結すると認められる事実に鑑みれば、たとえ合意解約自体が私法上適法であっても、同法附則にいう「正当になされたもの」とはいえない。2. 裁定書に条件の記載がない点については、農地調整法の「回復」の趣旨から、特段の定めがない限り従前と同一条件で設定されると解されるため、記載の欠如をもって裁定を違法とすることはできない。
結論
本件解約は「正当になされたもの」とはいえず、また本件裁定は違法ではない。したがって、上告を棄却する。
実務上の射程
農地法関連の紛争において、私法上の合意解約が成立していても、生存権的配慮を含む公法上の規制枠組み(「正当」性)が別個に要求されることを示す。また、行政処分の明確性の観点から裁定の不備が争われる際、実質的解釈(従前契約の維持)によって処分の有効性を維持する論理として参照可能である。
事件番号: 昭和24(オ)264 / 裁判年月日: 昭和28年4月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】農地調整法に基づく土地引上許可において、地主の自作を相当とする事情があり、かつ賃借人の生活維持に支障がない等の要件を満たす場合は、当該許可は適法である。 第1 事案の概要:地主Dは、昭和21年11月に本件農地の契約更新拒絶を通知した。その後、第二次農地調整法改正により地方長官(県知事)の許可が有効…
事件番号: 昭和26(オ)384 / 裁判年月日: 昭和27年11月7日 / 結論: 棄却
昭和二二年法律第二四〇号による農地調整法改正前においては、農地賃貸借の合意解約について、同法第九条第三項による知事の許可を要しない。
事件番号: 昭和27(オ)905 / 裁判年月日: 昭和29年5月14日 / 結論: 棄却
昭和二二年法律第二四〇号農地調整法改正法附則第三条第三項による裁定申請をして棄却された後、再び同一の裁定申請をすることは許されない。
事件番号: 昭和26(オ)257 / 裁判年月日: 昭和34年3月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】農地法(旧農地調整法)上の「一時賃貸借」に該当する場合、賃貸借の解約等について知事の許可を要せず、便宜的になされた許可における正当事由の有無も問題とならない。 第1 事案の概要:農地の賃借人と賃貸人の間において、当該賃貸借契約が一時的なものであると認定された事案。知事は便宜的に当該賃貸借に関する許…