判旨
農地調整法に基づく土地引上許可において、地主の自作を相当とする事情があり、かつ賃借人の生活維持に支障がない等の要件を満たす場合は、当該許可は適法である。
問題の所在(論点)
農地調整法及び同施行令11条に照らし、地方長官による小作地の引上許可処分が適法とされるための実体的な要件(自作の相当性や賃借人の生活への影響等)をいかに解すべきか。
規範
農地調整法(昭和21年改正後)に基づく小作地の引上許可の適否は、①地主が自作することの相当性、②農業生産の増大の可否、③小作地の引上により賃借人が相当な生活を維持することが困難となるおそれの有無、等の諸要素を総合的に考慮して判断されるべきである。
重要事実
地主Dは、昭和21年11月に本件農地の契約更新拒絶を通知した。その後、第二次農地調整法改正により地方長官(県知事)の許可が有効要件となったため、Dは引上許可を申請した。農地委員会は、Dの自作を相当とする決議を行い、これに基づき被上告人(知事)が引上許可指令を出した。これに対し、賃借人である上告人が、当該許可の取消しを求めて提訴した事案である。
あてはめ
本件では、地主Dが自作を相当とする点については当事者間に争いがない。また、事実認定によれば、本件引上によっても農業生産の増大が図られ、かつ賃借人(上告人)が相当な生活を維持することが困難になる事実は認められない。さらに、地主が他者に土地の交換を申し込んでいる等の引上を妨げる事由も認められない。したがって、農地調整法施行令11条の制限に抵触するような違法は見当たらないと解される。
結論
本件引上許可指令に違法はなく、上告人の取消請求を棄却した原判決は正当である。
実務上の射程
農地解放期における農地の引上許可に関する判断枠組みを示すものであるが、現代の農地法における解約制限(農地法18条等)の解釈、特に「正当の事由」を判断する際の比較衡量(地主側の必要性と借主側の居住・生活維持の必要性)の基礎的な視点として活用できる。
事件番号: 昭和26(オ)494 / 裁判年月日: 昭和28年6月19日 / 結論: 棄却
昭和二二年法律第二四〇号農地調整法改正法附則第三条第七項による賃借権設定の裁定に、賃借権の内容条件を定めてないときは、特別の事情のないかぎり、前の賃借権と同一の内容条件において裁定のあつたものと認むべきである。
事件番号: 昭和26(オ)452 / 裁判年月日: 昭和28年9月4日 / 結論: 棄却
知事が農地調整法第九条第三項によつて農地賃貸借解約を許可した後は、許可申請書に事実にあわない記載があり、錯誤によつて許可したものとしても申請者側に詐欺等の不正行為があつたことが顕著でない限り、それだけの理由で、さきの許可処分を取り消すことはできない。