調停により合意された家屋使用関係が単なる明渡猶予ではなく、一時使用のための賃貸借と認定判断されたことを是認した事案。
一時使用のための家屋賃貸借であると認定判断が是認された事例。
借家法8条
判旨
借地借家法(旧借家法)の適用を排除する「一時使用のための賃貸借」に該当するか否かは、契約の目的、期間、賃料等の諸般の事情を総合考慮して、客観的・合理的に判断されるべきである。
問題の所在(論点)
建物の賃貸借において、借地借家法(旧借家法)の適用を排除する「一時使用のための賃貸借」といえるための判断基準とその適用。
規範
「一時使用のための賃貸借」(借地借家法40条、旧借家法6条)に該当するかは、単に契約の名称や期間の定めの有無のみならず、賃貸借の目的、建物の構造、賃料の額、期間を限定すべき客観的事由の有無等を総合し、短期間で賃貸借を終了させる合理的な理由が認められるかという観点から判断する。
重要事実
本件建物の賃貸借契約において、上告人(賃借人)は一時使用目的であるとの認定を不服として上告した。原審は、証拠の取捨選択に基づき、本件契約が一時使用を目的としたものであると認定した。これに対し上告人は、かかる認定が社会通念や経験則に反し、理由不備があると主張した(具体的な契約期間や使用目的の詳細は判決文からは不明)。
あてはめ
最高裁は、原審が本件建物の賃貸借を一時使用のためのものであると認定判断したことについて、記録に照らして正当であるとした。具体的事実は判決文からは不明であるが、原審が認定した事実関係、すなわち賃貸借に至る経緯や期間を限定すべき特段の事情が、客観的にみて「一時使用」に該当する合理性を有していたものと推認される。上告人の主張は、単なる事実誤認の主張や独自の法的見解にすぎず、原審の判断を覆すに足りる違憲・違法は認められない。
結論
本件賃貸借は一時使用のためのものであると認められ、借地借家法(旧借家法)の適用は受けない。
実務上の射程
実務上、一時使用の成否は「期間の短さ」のみならず、なぜ短期間でなければならなかったかという「目的の合理性」が重視される。答案では、本判決の姿勢を踏まえ、利用目的、建物の代替性、賃料の低廉性、期間満了後の返還の確実性などの具体的事実を摘示し、一時使用の合意が単なる脱法目的(強行規定逃れ)でないことを論証する際に用いる。
事件番号: 昭和33(オ)208 / 裁判年月日: 昭和36年10月10日 / 結論: 棄却
一 原判示のような経過によつて成立した原判示裁判外の和解による賃貸借契約の締結について、賃貸人において一年後に学校を卒業し、二年間の商業見習を終えて、三年後右契約の目的家屋に店舗を構えて独立営業をするため、賃貸期間を三年と限り、賃借人も右事情を了解し、他に適当な店舗兼住宅を得た場合は右期間内といえども賃借家屋を明け渡す…
事件番号: 昭和42(オ)666 / 裁判年月日: 昭和43年3月28日 / 結論: 棄却
裁判上の和解により成立した土地賃貸借についても、土地の利用目的、地上建物の種類、設備、構造、賃貸期間等諸般の事情から、賃貸借当事者間に短期間にかぎり賃貸借を存続させる合意が成立したと認められる場合には、右賃貸借は、借地法第九条にいう一時使用の賃貸借に該当し、同法第一一条の適用を受けないと解すべきである。