判示事情のもとで三年の期間を厳守する約束で成立した借家契約は、一時使用のための建物賃貸借である。
一時使用のための借家契約と認められた事例。
借家法8条
判旨
借地借家法40条(旧借家法8条)にいう「一時使用のための賃貸借」にあたるか否かは、賃貸借の目的、動機、期間、賃貸物件の種類・構造等の諸客観的事情を総合的に考慮して判断される。
問題の所在(論点)
賃借人が建物の模様替えに多額の費用を投じ、かつ契約書に期間設定の理由が明示されていない場合であっても、本件賃貸借が「一時使用のため」の賃貸借(旧借家法8条)に該当するか。
規範
「一時使用のため建物の賃貸借をなしたこと明らかな場合」(旧借家法8条、現借地借家法40条)にあたるかは、賃貸借成立の動機、目的、期間、建物の種類・構造、設備の状況等の諸般の事情を総合考慮し、賃貸借の継続を期待させる事情が欠如しているかを客観的に判断すべきである。
重要事実
賃貸人(被上告人)は、病気療養中であり、全快までの約1年から1年半の間の入院費用や生活費を賄うために建物の賃貸を承諾した。賃貸人は回復後に建物で営業し生計を立てる必要があったため、当初は2年の期間を提示したが、賃借人(上告人)からの強い希望により期間3年を厳守する約束で契約を締結した。一方で、賃借人は飲食店営業のために多額の費用を投じて模様替えを行い、契約書には一時使用の目的が明記されていなかった。
あてはめ
本件では、賃貸人が病気療養という一時的な経済的事情から賃貸に応じたのであり、回復後の自己使用が明確に予定されていた。契約成立の過程において、賃借人が期間の厳守を強く約束した事実は、長期の賃借継続を期待していないことを示す。賃借人が多額の費用を投じて模様替えをした点や、書面上の理由記載の欠如といった事実はあるものの、前述の成立の動機や経緯という強固な主観的・客観的事情を覆すには至らない。したがって、本件は短期間の利用を前提とした一時使用の賃貸借と解される。
結論
本件賃貸借は一時使用のための賃貸借にあたる。そのため、借家法の更新拒絶に関する正当事由等の規定は適用されず、期間満了により賃貸借は終了する。
実務上の射程
一時使用の成否を判断する際、建物の客観的利用状況(多額の設備投資等)のみならず、賃貸借成立の「動機」や「経緯」といった主観的事情も、客観的な証拠により裏付けられる限り、重要な判断要素となることを示している。答案上は、賃借人側の投資状況と、賃貸人側の自己使用の必要性・確実性を比較考量する際の有力な材料として活用できる。
事件番号: 昭和30(オ)494 / 裁判年月日: 昭和31年9月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】一時使用のための賃貸借に当たるか否かは、当事者の主観のみならず諸般の事情を総合して判断すべきであり、また、文書提出命令に違背した場合の効果は、当該文書の記載内容に関する主張を真実と認めるにとどまり、直ちに証せんとする事実まで真実と認められるものではない。 第1 事案の概要:被上告人とAとの間で昭和…