一 原判示のような経過によつて成立した原判示裁判外の和解による賃貸借契約の締結について、賃貸人において一年後に学校を卒業し、二年間の商業見習を終えて、三年後右契約の目的家屋に店舗を構えて独立営業をするため、賃貸期間を三年と限り、賃借人も右事情を了解し、他に適当な店舗兼住宅を得た場合は右期間内といえども賃借家屋を明け渡すべき旨を約し、なお以上の点を考慮して比隣の借賃相当額をはるかに下廻る賃料を定めた等(原判決理由参照)の事情があるときは、右和解の際、賃借人が当該家屋の前賃借人に相当額の立退料を支払いかつその後相当の費用を投じて賃借家屋の内部に改造・造作を加えたことが認められるとしても、右賃貸借契約は、借家法第八条にいう一時使用のため建物の賃貸借をなしたこと明らかな場合に該当する。 二 借家法第八条にいわゆる一時使用のための賃貸借といえるためには、その期間が一年未満の場合でなければならないものではない。
一 一時使用のための借家権の事例。 二 一時使用のための借家権といえるためには、その期間が一年未満でなければならないか。
借家法8条,借家法3条ノ2
判旨
借地借家法40条(旧借家法8条)にいう一時使用のための賃貸借は、期間の長短のみで決まるのではなく、賃貸借の目的、動機、その他諸般の事情から、短期間に限り存続させる趣旨であることが客観的に判断されるべきである。
問題の所在(論点)
旧借家法8条(現行借地借家法40条)の「一時使用のために建物の賃貸借をしたことが明らかなとき」に該当するか否かの判断基準、および3年という期間設定が一時使用の認定を妨げるかが問題となる。
規範
「一時使用のため」の賃貸借といえるかは、単に期間の長短のみを基準とするのではなく、賃貸借の目的、動機、その他諸般の事情を総合的に考慮し、当該契約を短期間内に限り存続させる趣旨であることが客観的に認められるか否かによって判断すべきである。したがって、その期間が1年未満であることを要しない。
重要事実
賃貸人(被上告人)は、賃借人(上告人)に対し、期間を3年間と定めて建物を賃貸した。当該契約の締結に際しては、賃借人が3年以内であっても明け渡すことを了解していた事実があり、また、賃料が低額に設定されていた。賃貸人は自己使用の必要性を理由に、期間満了に伴う明け渡しを求めたが、賃借人は一時使用の適用を否定して争った。
あてはめ
本件では、契約期間が3年と比較的長期にわたるものの、契約締結の経緯において賃借人が期間内でも明け渡すことを了解していたこと、および賃料が低額であったこと等の諸事情が認められる。これらの事情を総合すれば、本件契約は短期間内に限り存続させる趣旨であったことが客観的に認められる。一時使用の判断は期間の長短のみによるものではないため、3年という期間であっても一時使用と認定することは妨げられない。
結論
本件賃貸借は一時使用のための賃貸借に該当し、借家法の更新拒絶に関する規定(正当事由等)の適用は受けないため、期間満了により終了する。
実務上の射程
借地借家法40条の適用を検討する際、単に「期間が短い」という点だけでなく、賃料の低廉性、更新がない旨の合意、賃貸借に至る動機(将来の取り壊しや自己使用予定等)といった多角的な事情から「一時使用の客観的趣旨」を認定する際のリーディングケースとして活用できる。
事件番号: 昭和38(オ)1385 / 裁判年月日: 昭和39年12月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】建物賃貸借が一時使用目的であるか否かは、賃貸借の期間のみならず、契約の目的、建物の種類・構造、賃貸借に至る経緯等の諸般の事情を総合考慮して判断すべきである。 第1 事案の概要:被上告人が上告人から昭和34年に建物及び土地を代金113万円で買い受けた際、買戻約款が付された。同時に、本件建物の賃貸借契…