一時使用のための建物賃貸借と判定したことが肯認された事例。
判旨
建物賃貸借が一時使用目的であるか否かは、賃貸借の期間のみならず、契約の目的、建物の種類・構造、賃貸借に至る経緯等の諸般の事情を総合考慮して判断すべきである。
問題の所在(論点)
(旧)借家法8条(現借地借家法40条)の「一時使用」の認定において、賃貸借期間が1年未満であるという事実のみをもって直ちに一時使用目的と断定できるか、あるいはそれ以外の諸般の事情を考慮すべきか。
規範
建物賃貸借が(旧)借家法8条(現借地借家法40条)にいう「一時使用のために借家権を設定したことが明らかな場合」に該当するか否かは、単に合意された賃貸借期間が短期であるという一事のみをもって判断されるべきではない。契約の趣旨、目的、動機、建物の種類・構造、賃貸の経緯、賃料の低廉性等の諸般の客観的事情を総合し、その賃貸借を短期間で終了させる実質的な合理性が認められるかによって判断される。
重要事実
被上告人が上告人から昭和34年に建物及び土地を代金113万円で買い受けた際、買戻約款が付された。同時に、本件建物の賃貸借契約が締結されたが、その期間は1年未満と定められていた。原審は、この賃貸借契約を一時使用目的のものと認定したが、上告人は「1年未満の期間を定めた一事のみをもって一時使用と判断したことは借家法の解釈を誤っている」と主張して上告した。
あてはめ
本件において、原判決は単に「期間が1年未満である」という一事をもって一時使用目的と判断したわけではない。買戻約款付売買契約に伴って締結されたという経緯や、証拠関係から認められるその他の具体的事情を照らし合わせ、実質的に一時使用の目的が明らかであると判断している。このような判断手法は、証拠の取捨選択および事実認定という裁判所の専権事項に属するものであり、経験則や採証法則に反する点は認められない。
結論
本件賃貸借は一時使用のための建物賃貸借に該当し、借家法の更新拒絶に関する制限等の適用を受けない。上告棄却。
実務上の射程
一時使用目的の有無は「期間」という形式的要素だけでなく、契約の背後にある「目的」や「経緯」等の実質的要素から判断されることを明示した。答案上は、期間が短い事実を指摘した上で、なぜ短期間で終了させる必要があったのかという具体的事実(例:建物解体予定、転勤期間中等)を規範にあてはめる際の根拠として用いるべきである。
事件番号: 昭和25(オ)78 / 裁判年月日: 昭和27年6月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】建物の賃貸借が一時使用のためになされたものであることが明らかな場合には、借家法(現・借地借家法40条)の規定は適用されない。 第1 事案の概要:上告人は本件建物を賃借したが、その賃貸借契約の目的が「一時使用のため」であると認定された事案である。上告人は、借家法2条(現・借地借家法26条等の更新に関…
事件番号: 昭和35(オ)618 / 裁判年月日: 昭和38年12月5日 / 結論: 棄却
家屋不法占拠による賃貸利益喪失の損害を判定するにつき、当該家屋が他に賃貸しえなかつた事情は、特別の事情であるから、その主張立証のない限り、裁判所はこれを斟酌しないのが当然である。