家屋不法占拠による賃貸利益喪失の損害を判定するにつき、当該家屋が他に賃貸しえなかつた事情は、特別の事情であるから、その主張立証のない限り、裁判所はこれを斟酌しないのが当然である。
家屋不法占拠による損害と特別事情の主張立証責任。
民法709条,民訴法第3章第1節
判旨
賃貸借契約が一時使用目的であると認められる場合には、旧借地法及び旧借家法の適用は受けず、期間満了により契約は終了する。また、所有権取得者が不法占有者に対し明渡しを求めることは、特段の事情がない限り権利の濫用には当たらない。
問題の所在(論点)
一時使用目的の賃貸借契約として旧借地法・借家法の適用が排除されるか。また、国から所有権を取得した新所有者による明渡請求が権利の濫用に該当するか。
規範
賃貸借契約が「一時使用」を目的とするもの(旧借家法7条、旧借地法9条参照)と認められる場合、借地借家法上の更新拒絶の正当事由等の制限は適用されない。また、所有権に基づく明渡請求が権利の濫用(民法1条3項)となるかは、取得の経緯や占有者の事情等の諸般の状況を総合考慮して判断される。
重要事実
上告人は、昭和22年に国との間で本件土地建物につき期間1年の一時使用目的の賃貸借契約を締結した。その後、期間の延長を経て、昭和24年3月に期限を同年6月30日とし、期限後は直ちに返還する旨を合意した。しかし、期限到来後も占有を継続した。国から所有権を取得した被上告人が明渡しを求めたのに対し、上告人は借地法・借家法の適用による保護を主張し、また被上告人の請求は権利の濫用であると争った。
あてはめ
本件契約は、当初から一時使用目的で締結され、更新時も期限後の即時返還が明記されていたことから、実態として一時使用目的の契約であると認められる。したがって、強行規定による期間の保障はない。また、上告人は当初、被上告人の所有権取得を前提に争っており、登記の有無も明示的に争っていなかった。被上告人が国から正当に所有権を取得した以上、これに基づき占有者へ明渡しを求めることは正当な権利行使であり、これを濫用とする特段の事情は認められない。
結論
本件賃貸借は一時使用目的であり、期限到来により終了している。被上告人の明渡請求は正当であり、権利の濫用には当たらない。
実務上の射程
一時使用目的の認定については、契約書の文言だけでなく、契約の動機や期間、更新の経緯等の客観的事実から慎重に判断されるべきことを示唆する。権利の濫用の主張については、所有権の取得過程に瑕疵がない限り、単なる占有の継続の必要性だけでは認められにくいという実務的な傾向を裏付けるものである。
事件番号: 昭和38(オ)235 / 裁判年月日: 昭和39年6月30日 / 結論: 棄却
準備書面及び書証の表示文言に判示のような記載があっただけでは、当該要証事実の主張があったとは見られない。
事件番号: 昭和33(オ)685 / 裁判年月日: 昭和34年5月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】借地借家法の適用を排除する「一時使用のための借地権」に該当するか否かは、賃貸借の目的、期間、建物設備の種類、賃貸借成立の経緯等を総合的に考慮して判断される。 第1 事案の概要:上告人(賃借人)と被上告人(賃主)との間で本件土地の賃貸借契約が締結された。原審(東京高判昭33・3・25)によれば、契約…