判旨
建物の賃貸借が一時使用のためになされたものであることが明らかな場合には、借家法(現・借地借家法40条)の規定は適用されない。
問題の所在(論点)
建物の賃貸借が「一時使用のため」になされたものであると認められる場合に、借家法(現・借地借家法)の更新維持等に関する規定が適用されるか、またその判断が妥当か。
規範
建物の賃貸借において、その契約が一時使用を目的とするものであることが客観的状況から明らかである場合には、借家法上の更新拒絶の制限や正当事由の具備といった借家人保護の規定は適用されない。
重要事実
上告人は本件建物を賃借したが、その賃貸借契約の目的が「一時使用のため」であると認定された事案である。上告人は、借家法2条(現・借地借家法26条等の更新に関する規定に相当)を根拠に、賃貸借の継続を主張して抗弁したが、原審は一時使用目的であることを理由にこれを退けた。
あてはめ
原審が認定した事実関係、すなわち賃借の目的が一時的なものであるという点に照らせば、本件賃貸借は借家法8条(現・借地借家法40条)にいう「一時使用の為建物の賃貸借を為したること明なる場合」に該当する。したがって、借家人保護を目的とする同法の諸規定を適用する余地はないと解される。
結論
本件建物の賃貸借は一時使用目的であることが明らかであるため、借家法の適用はなく、同法2条に基づく上告人の抗弁は認められない。
実務上の射程
借地借家法40条の適用範囲を画する判例であり、一時使用目的の有無は、賃貸借の動機、建物の種類・構造、賃料の額、期間等の諸般の事情を総合考慮して決せられる。答案上は、一時使用の合意が客観的に明白であることを指摘し、同条の適用によって法の保護(正当事由等)を排除する構成をとる際に引用すべきである。
事件番号: 昭和33(オ)208 / 裁判年月日: 昭和36年10月10日 / 結論: 棄却
一 原判示のような経過によつて成立した原判示裁判外の和解による賃貸借契約の締結について、賃貸人において一年後に学校を卒業し、二年間の商業見習を終えて、三年後右契約の目的家屋に店舗を構えて独立営業をするため、賃貸期間を三年と限り、賃借人も右事情を了解し、他に適当な店舗兼住宅を得た場合は右期間内といえども賃借家屋を明け渡す…