訴訟の係属中に訴訟代理人たる弁護士も関与して成立した訴訟上の和解においては、その文言自体相互に矛盾し、または文言自体によつてその意味を了解しがたいなど、和解条項それ自体にかしを含むような特別の事情のないかぎり、和解調書に記載された文言と異なる意味に和解の趣旨を解すべきではない。
訴訟上の和解の解釈
民法695条,民訴法203条,民訴法
判旨
訴訟上の和解の解釈にあたっては、その成立経緯やその後の状況を考慮し得るが、和解条項の文言と異なる意味に解することは、条項自体に内包する瑕疵等の特別の事情がない限り、容易に許されない。
問題の所在(論点)
訴訟上の和解の条項の解釈において、表示された文言と異なる意味に解釈することが許されるための要件が問題となる。
規範
訴訟上の和解は確定判決と同一の効力を有するため(民訴法267条、旧203条)、その解釈は表示された文言を基礎とすべきである。和解条項の文言と異なる意味に解釈するためには、①文言自体が相互に矛盾している、または②文言自体によってその意味を了解し難いなど、和解条項それ自体に内包する瑕疵を含むような「特別の事情」を要する。
重要事実
建物の使用開始から和解成立に至るまでの経緯、および和解成立以後の諸般の状況に基づき、原審は和解条項に「明渡猶予」の文言があるにもかかわらず、その文言と正反対に、実質的には「賃貸借の成立」を約したものであると解釈した。これに対し、本件和解は訴訟の係属中に弁護士も関与して成立した訴訟上の和解であった。
あてはめ
和解条項の文言の解釈に際し、成立経緯や事後の状況を考慮すること自体は違法ではない。しかし、本件は弁護士が関与した訴訟上の和解であり、法的効力が極めて大きい。原審が認定した事実関係のみでは、和解条項の文言自体に矛盾があるなどの「特別の事情」があるとはいえず、文言と正反対の解釈を採ることは論理の不備・齟齬があるといえる。
結論
和解条項の文言に瑕疵がある等の特段の事情がない限り、文言と異なる解釈は認められず、原判決には理由不備・理由齟齬の違法があるとして破棄差戻しとした。
実務上の射程
処分権主義が妥当する訴訟上の和解において、公的な効力(執行力等)を維持するため、客観的な文言解釈を重視する姿勢を示したもの。答案上は、当事者の真意を優先して文言を軽視する安易な解釈を抑制する際の論拠となる。
事件番号: 昭和42(オ)666 / 裁判年月日: 昭和43年3月28日 / 結論: 棄却
裁判上の和解により成立した土地賃貸借についても、土地の利用目的、地上建物の種類、設備、構造、賃貸期間等諸般の事情から、賃貸借当事者間に短期間にかぎり賃貸借を存続させる合意が成立したと認められる場合には、右賃貸借は、借地法第九条にいう一時使用の賃貸借に該当し、同法第一一条の適用を受けないと解すべきである。