裁判上の和解の内容および効力については、原則として和解調書に記載されたところからこれを判断すべきであり、和解調書に記載されなかつた債権債務を和解条項中の債務と関連させて、その効力を論ずることは許されない。
和解調書に記載されなかつた債権債務と裁判上の和解の解釈
民訴法203条
判旨
裁判上の和解の効力は、原則として和解調書に記載された事項のみから判断すべきであり、調書に含まれない債務の不履行や期限間近の履行提供をもって債務の本旨に従わない弁済と断ずることはできない。したがって、和解条項に従った代金の提供があれば、他の不随的義務の不履行等があったとしても、買戻等の権利行使は有効に認められる。
問題の所在(論点)
裁判上の和解に基づく権利行使(買戻し)において、和解調書に明記されていない債務の不履行や、期限間近の履行提供が、民法493条の「債務の本旨に従った」弁済の提供を否定する理由となり得るか。
規範
裁判上の和解の内容および効力については、原則として和解調書に記載された文言から客観的に判断すべきである。調書に記載されなかった債権債務を和解条項中の債務と関連させてその効力を論ずることは許されない。また、和解条項に特段の制限がない限り、期限内の履行提供であれば、それが期限間近であったとしても信義則に反するものとはいえず、債務の本旨に従った有効な提供となる。
重要事実
上告人と被上告人は、上告人が債務の一部(130万5000円)を支払ったときは、被上告人が上告人に建物の所有権を移転する旨の裁判上の和解をした。上告人は期限の3日前に当該金員を現実に提供したが、被上告人は「上告人が和解条項にある登記手続(第一項)や写真提供(第六項)を遅延し、かつ登記費用を支払っていない」ことを理由に受領を拒絶。上告人は金員を供託した上で所有権移転登記を了し、建物の明渡しを求めた。
あてはめ
本件和解条項によれば、金員支払と所有権移転は対価関係にあるが、登記費用の負担や写真提供等の付随的事項の履行は金員支払の前提条件とはされていない。したがって、登記費用の不払や他項の不履行は本件和解の効力を左右しない。また、期限3日前という提供時期も、条項に制限がない以上、信義則に反するとまではいえない。ゆえに、上告人による現実に提供は債務の本旨に従ったものであり、受領拒絶に正当な理由はないため、弁済供託は有効である。
結論
上告人の弁済提供は有効であり、供託によって建物の所有権を取得している。したがって、上告人による建物明渡請求は認められ、被上告人による登記抹消請求は棄却される。
実務上の射程
裁判上の和解における「債務の本旨」は、和解調書の文言を基準に厳格に解釈される。調書外の合意や道徳的非難を理由に履行の有効性を否定することは困難であり、和解条項の起案において、条件関係(停止条件等)を明確に記載しておくことの重要性を示す射程を持つ。
事件番号: 昭和35(オ)576 / 裁判年月日: 昭和37年12月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】賃貸借契約において、賃借人が分割金の支払を2回分以上怠ったときは「催告を要せず契約は当然解除されたものとして直ちに物件を明け渡す」旨の和解条項がある場合、催告のみならず解除の意思表示も不要で当然に契約が終了する。 第1 事案の概要:賃借人(上告人)と賃貸人(被上告人)との間の和解において、上告人は…
事件番号: 昭和46(オ)1127 / 裁判年月日: 昭和47年9月7日 / 結論: 棄却
売買契約が詐欺を理由として取り消された場合における当事者双方の原状回復義務は、同時履行の関係にあると解するのが相当である。