一、地上家屋が第三者に譲渡されたにもかかわらず、所有権移転登記がされないで登記簿上譲渡人所有名義のままになつている場合であつても、敷地所有者から右譲渡人に対し、敷地不法占有を理由として家屋収去請求をすることは許されない。 二、敷地所有者の土地所有権に基づく家屋収去土地明渡の確定判決の事実審口頭弁論終結前に、被告から地上家屋を譲り受けた第三者は、その所有権移転登記が口頭弁論終話後にされた場合においても、右確定料決につき、民訴法二〇一条所定の口頭弁論終結後の承継人にはあたらない。 (一、二につき反対意見がある)
一、敷地不法占有と家屋収去請求の相手方 二、土地所有権に基づく家屋収去土地明渡の確定判決の事実審口頭弁論終結前に家屋を譲り受けた第三者に対する右確定判決の効力
民法176条,民法177条,民訴法201条,民訴法545条
判旨
土地所有権に基づく建物収去土地明渡請求の相手方は、現実に建物を所有して土地を占拠する者であるべきであり、建物を譲渡した者は、たとえ登記名義が残っていても収去義務を負わない。
問題の所在(論点)
土地所有権に基づく建物収去土地明渡請求において、建物を譲渡したが登記名義のみを保持する者は、当該請求の相手方となるか。また、口頭弁論終結前に建物を譲り受けた者が、終結後に本登記を備えた場合、民訴法115条1項3号の「口頭弁論終結後の承継人」に該当するか。
規範
土地所有権に基づく物上請求権(建物収去土地明渡請求)の相手方は、現実に家屋を所有することによってその土地を占拠し、土地所有権を侵害している者であるべきである。地上家屋が譲渡された以上、所有権移転登記が経由されず登記簿上の名義が譲渡人に残っていても、譲渡人はもはや現実に敷地を占拠しているとはいえず、物上請求権の相手方とはならない。
重要事実
土地所有者である被上告人は、建物登記名義人であるDらに対し建物収去土地明渡を、占有者である上告人に対し建物退去土地明渡を求め、昭和37年に勝訴判決を得た(事実審口頭弁論終結時は昭和35年)。しかし、上告人はそれ以前の昭和28年にDらから建物を買い受け、昭和33年に所有権移転の仮登記を経由していた(本登記は昭和40年)。上告人は、自身が口頭弁論終結前の承継人であるとして、右確定判決に基づく強制執行の排除を求めて請求異議の訴えを提起した。
事件番号: 昭和31(オ)119 / 裁判年月日: 昭和35年6月17日 / 結論: 棄却
仮処分申請に基き、裁判所の嘱託により家屋所有権保存登記がなされている場合であつても、仮処分前に家屋を未登記のまま第三者に譲渡しその敷地を占拠していない右保存登記名義人に対し、敷地所有者から敷地不法占有を理由として家屋収去請求をすることは許されない。
あてはめ
上告人がDらから建物の譲渡を受けたのは、前訴の口頭弁論終結時(昭和35年)より前である昭和28年であった。建物譲渡人は登記名義の有無にかかわらず収去義務を負わないため、上告人は譲渡を受けた時点で実質的な収去義務をDらから承継したといえる。そうすると、上告人は口頭弁論終結「後」の承継人には該当しない。登記の欠缺を主張できるのは民法177条の「第三者」であるが、不法占拠を問題とする土地所有者はこれに当たらず、登記の有無にかかわらず実質的占拠者を相手方とすべきである。
結論
上告人は口頭弁論終結後の承継人にあたらず、本件債務名義の執行力は上告人に及ばない。したがって、上告人は請求異議の訴えにつき原告適格を有さず、訴えは却下されるべきである。
実務上の射程
建物収去請求の被告適格に関する原則を示す。実務上、土地所有者は「登記名義人」を被告とするのが通常だが、判例は本件のように実態を重視する。ただし、後に最高裁(最判平6.2.8)は、自らの意思で登記名義を保有し続ける者に対し、登記名義を理由とする収去義務を肯定する例外を認めている点に注意が必要である。
事件番号: 昭和24(オ)126 / 裁判年月日: 昭和26年4月13日 / 結論: 棄却
一 裁判上の和解により建物を収去しその敷地を明け渡すべき義務のある者から建物を借り受けその敷地を占有する者は、民訴第二〇一条第一項にいわゆる承継人にあたる。 二 民訴第五一九条第一項にいわゆる債務者の一般承継人には、判決の効力の及ぶ債務者の特定承継人をも含む趣旨に解釈すべきである。