甲の乙に対する土地所有権に基づく建物収去、土地明渡の確定判決の事実審口頭弁論終結後、甲の死亡により土地所有権が丙丁らに共同相続された場合、乙が丙からその土地共有持分を取得したとしても、丙以外の共同相続人らは、民法第四二九条の法意に従い、乙に対して右判決を執行し得る。
土地所有権に基づく収去明渡の確定判決の執行債務者が右土地所有権の共同相続持分の一部を取得した場合の執行の許否。
民法899条,民法429条,民訴法201条,民訴法545条
判旨
建物収去土地明渡請求権を有する者が死亡し、債務者がその相続人の一部から土地共有持分を取得しても、当該請求権は準共有の関係に立つにとどまり、混同により消滅しない。
問題の所在(論点)
建物収去土地明渡請求権という不可分債権の債務者が、債権者の相続人の一部から土地持分を買い受けた場合、混同(民法520条)によって当該債権は消滅するか。また、土地の共有関係の発生が請求権の行使に影響を及ぼすか。
規範
債務者が債権の準共有者となった場合であっても、債権者と債務者が完全に同一人格に帰したとはいえず、混同(民法520条)は生じない。不可分債権(民法428条、429条参照)の準共有関係においては、他の準共有者は依然として債務者に対し、債務名義に基づく権利を行使し得る。
重要事実
本件土地の所有者Dは、建物所有者である上告人に対し、建物収去土地明渡請求の勝訴確定判決を得ていた。その後Dが死亡し、被上告人ら(B1、B2、E)及び訴外(F、G、H)の6名が土地を共同相続した。上告人は、共同相続人のうちF、G、Hの持分を買い受け、土地の共有権者となった。これに対し、他の相続人である被上告人らが、確定判決(債務名義)に基づき上告人へ建物収去及び明渡しを求めて強制執行を申し立てたため、上告人が執行阻止を求めた。
あてはめ
上告人は、土地持分の取得により被上告人らとともに土地共有権者となったが、同時に建物収去土地明渡請求権という「不可分債権」の準共有者たる関係に立ったにすぎない。債権債務が全く同一人格者に帰した「混同」の場合とは異なり、他の準共有者である被上告人らは、民法429条(不可分債権の規定)の法意に従い、依然として上告人に対し債務名義上の権利を行使し得る。また、上告人が土地や建物の共有関係を取得した事実のみでは、確定判決に基づく明渡請求の効力を左右するものではない。
結論
債権は混同により消滅せず、他の共有者は依然として建物収去土地明渡しの執行をなし得る。上告人の請求は棄却される。
実務上の射程
不可分債務(建物収去義務)を負う者が、債権側の地位(土地所有権)の一部を相続や譲渡により承継しても、他の債権者が存在する限り、その義務を免れないことを示す。司法試験においては、共有持分権者による不法占拠者(持分取得者を含む)への明渡請求の可否や、混同の例外場面を検討する際の論拠として活用できる。
事件番号: 昭和24(オ)126 / 裁判年月日: 昭和26年4月13日 / 結論: 棄却
一 裁判上の和解により建物を収去しその敷地を明け渡すべき義務のある者から建物を借り受けその敷地を占有する者は、民訴第二〇一条第一項にいわゆる承継人にあたる。 二 民訴第五一九条第一項にいわゆる債務者の一般承継人には、判決の効力の及ぶ債務者の特定承継人をも含む趣旨に解釈すべきである。
事件番号: 昭和32(オ)156 / 裁判年月日: 昭和33年4月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産の二重譲渡において、後の買受人が先に買い受けた者の存在を知っていた(悪意であった)としても、それだけでは民法177条の「第三者」に該当することを妨げられず、登記を先に備えた者が優先する。 第1 事案の概要:上告人Aが係争土地を買い受けた後、被上告人も同土地を買い受けた。被上告人は、上告人Aが…