判旨
調停により建物の明渡義務が確定した場合、その後に転貸人である債権者が賃借人としての地位を喪失したとしても、転借人である債務者の明渡義務は消滅しない。
問題の所在(論点)
転貸借の終了により明渡義務が確定した後、転貸人が賃借人(転貸人)としての地位を喪失した場合、転借人の明渡義務は消滅するか。
規範
賃貸借契約の終了や調停等によって建物明渡義務が確定した後は、その後に賃貸人(転貸人)が目的物に対する権利を失ったとしても、特段の事情がない限り、既定の契約上の明渡義務や不法占有に基づく義務には影響を及ぼさず、義務は消滅しない。
重要事実
上告人と被上告人の間で、上告人が本件家屋を昭和23年5月末日まで転借し、同日限り退去して明け渡す旨の調停が成立した。しかし、上告人は期限を過ぎても明渡義務を履行しなかった。その後、転貸人である被上告人が、元の賃貸人との関係で賃借人(転貸人)としての地位を失ったことから、上告人は明渡義務の消滅を主張して争った。
あてはめ
本件において、上告人は調停により定められた期限経過後、本件家屋の不法占有者として、被上告人に対し契約上の明渡義務を負担している。その後、被上告人が賃借人たる地位を失ったとしても、上告人の占有がこれによって正当化されるものではない。また、既定の明渡義務を基礎づける契約関係が遡及的に消滅する理由もない。したがって、債権者である被上告人の権利喪失は、上告人の明渡義務の消長に何ら影響を与えないと解される。
結論
被上告人が賃借人としての地位を失ったとしても、上告人の明渡義務は消滅しない。
実務上の射程
建物の明渡請求において、請求権者が目的物の所有権や賃借権を事後的に喪失したとしても、占有者が不法占有状態にある限り、義務の履行を拒むことはできないという法理として活用できる。特に賃貸借終了後の明渡義務の確定性を論じる際に有用である。
事件番号: 昭和33(オ)895 / 裁判年月日: 昭和35年12月9日 / 結論: 棄却
調停申立が取り下げられても、その調停申立による催告の効力は当然には消滅しない。
事件番号: 昭和33(オ)890 / 裁判年月日: 昭和35年6月23日 / 結論: 棄却
賃貸人の地位と転借人の地位とが同一人に帰した場合であつても、転貸借は、当事者間にこれを消滅させる合意の成立しない限り、消滅しないものと解すべきである。