判旨
当事者の死亡により訴訟手続が中断すべき場合であっても、相続人が訴訟の係属を覚知しており、実質的な相続人の意思に基づいて選任された代理人によって和解がなされたときは、当該和解は有効である。
問題の所在(論点)
訴訟の目的物件の所有者が死亡し、訴訟手続が中断すべき状況下において、相続人の法定代理人によって事実上選任された訴訟代理人が行った裁判上の和解の効力(民事訴訟法124条1項の解釈)。
規範
当事者が死亡した場合には訴訟手続は当然に中断する(民事訴訟法124条1項1号)が、相続人が訴訟の係属を覚知しており、かつ、相続人の実質的な意思に基づいて訴訟代理人が選任されているなどの特段の事情がある場合には、訴訟手続上の行為(裁判上の和解等)を無効と解すべきではない。
重要事実
家屋明渡請求事件の原告Dが、出征中に死亡した。Dには未成年者の相続人Bがおり、その親権者EがDの不在中の財産管理者であった。Eは、Dの死亡後、Bを代理して事実上弁護士を選任し、当該弁護士が相手方(上告人)との間で裁判上の和解を成立させた。上告人は、Dの死亡により訴訟は中断しており、当該和解は無効であると主張して争った。
あてはめ
本件では、原告Dの死亡により本来は訴訟手続が中断すべきであったが、相続人Bの親権者であるEがDの死亡および訴訟の係属を認識していた。その上で、EはBの親権者として、事実上弁護士を選任して訴訟を追行させている。このように、実質的な当事者(相続人)の意思が反映された形で代理人が選任され、和解が成立した以上、手続の承継が形式的に完了していなくとも、当該和解を無効とする理由はないと評価される。
結論
本件裁判上の和解はBと上告人との間に成立したものとして有効であり、訴訟法上も無効とはいえない。
実務上の射程
当事者死亡による訴訟手続中断の例外を認めた判例である。相続人が訴訟の係属を知り、かつ実質的に訴訟追行の意思を有していたと認められる事情がある場合には、手続上の瑕疵を治癒し、和解等の訴訟行為の効力を維持する方向に働く。答案上は、中断・受継の欠缺が問題となる場面で、手続保障の形骸化がないことを論証する際に活用できる。
事件番号: 昭和25(オ)252 / 裁判年月日: 昭和27年2月22日 / 結論: 棄却
家督相続人の選定は、選定により効力を生じ、届出は、その効力発生の要件ではない。
事件番号: 昭和32(オ)563 / 裁判年月日: 昭和33年9月19日 / 結論: 棄却
被相続人の訴訟代理人であつた者は、被相続人の死亡による訴訟承継の結果、新たに当事者となつた相続人の訴訟代理人として訴訟行為をなすことができるものと解すべきである。