当事者が死亡したが、訴訟代理人があるため、訴訟手続を中断しないまま口頭弁論を終結した場合には、相続人が何人であるか明らかであるかぎり、判決には当事者として新当事者を表示するを相当とし、旧当事者を表示しているときは、民訴法第一九四条によつて更正することができる。
訴訟代理人があるため訴訟手続が中断しない場合と当事者の表示
民訴法213条,民訴法194条
判旨
当事者が死亡しても、訴訟委任を受けた代理人が上訴の特別授権を有している場合、訴訟手続は中断せず、判決は新当事者を表示すべきである。旧当事者を表示した判決は当然に無効とはならず、更正の対象となるに留まる。
問題の所在(論点)
訴訟代理人が上訴の特別授権を受けている場合において、当事者が死亡したときに訴訟手続は中断するか。また、死亡した旧当事者を掲げてなされた判決の効力はどうなるか。
規範
訴訟代理権は本人の死亡によって消滅せず(民事訴訟法58条1項、旧85条)、代理人は新たな正当な当事者の代理人として任務を続行する。上訴の特別授権がある場合、その授権事項が完了するまでは代理人が存在するため、当事者の死亡によっても訴訟手続は中断しない(同法124条2項、旧213条)。この場合、判決には新当事者を表示すべきであるが、誤って旧当事者を表示したときは判決を更正すべきものと解する(同法257条、旧194条)。
重要事実
被控訴人Dは、控訴審の口頭弁論終結前に死亡した。Dは生前、訴訟代理人に対し、控訴および上告(相手方からの上告への応訴を含む)の特別授権を含む訴訟委任を行っていた。Dの死亡により、その妻Bが相続人として本件家屋の所有権を取得した。しかし、原審(控訴審)は、当事者の表示を亡Dとしたまま判決を言い渡した。これに対し上告人らは、代理権は消滅しており、死亡したDを当事者とする判決は無効であると主張した。
あてはめ
Dから特別授権を得た代理人が存在したため、Dの死亡後も訴訟手続を中断する必要はない。相続人Bへの当事者の変動はあるが、中断受継の手続が省略されたに過ぎない。したがって、旧当事者Dを表示してなされた原判決は効力を失うものではない。ただし、判決には新当事者であるBを表示すべきであったため、表示上の誤りとして職権で更正を行うのが相当である。
結論
上訴の特別授権がある限り訴訟手続は中断せず、旧当事者を表示した判決も無効ではない。最高裁は職権で当事者表示を相続人に更正した上で、上告を棄却した。
実務上の射程
訴訟代理人がいる場合の当事者死亡という民事訴訟法の典型論点に関する重要判例である。答案上は、124条2項の適用により中断が回避されることを論じた後、表示を誤った判決の効力(無効ではなく更正可能)について述べる際に活用する。判決の更正(257条)の限界や、実質的な当事者が誰であるかの確定という文脈でも重要である。
事件番号: 昭和52(オ)588 / 裁判年月日: 昭和52年12月23日 / 結論: その他
訴訟手続の中断中に、中断の事実を看過して口頭弁論期日を開き、弁論を終結し、判決を言い渡した原審の訴訟手続には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令違背があり、その判決は破棄を免れない。
事件番号: 昭和50(オ)1167 / 裁判年月日: 昭和51年3月15日 / 結論: 棄却
訴訟代理権を授与された者が本人の死亡したのちその者を原告と表示して提起した訴は、死亡した本人の相続人のための訴として適法である。