被相続人の訴訟代理人であつた者は、被相続人の死亡による訴訟承継の結果、新たに当事者となつた相続人の訴訟代理人として訴訟行為をなすことができるものと解すべきである。
訴訟承継の場合における訴訟代理人の地位。
民訴法213条,民訴法85条
判旨
当事者の死亡により訴訟関係が当然に承継された場合において、亡当事者に訴訟代理人が存するときは訴訟手続は中断しない。このとき、当該訴訟代理人は、特段の手続を経ることなく、新たに当事者となった相続人らのために訴訟行為をなし得る。
問題の所在(論点)
当事者の死亡により訴訟関係の承継が生じたが、亡当事者に訴訟代理人が存在するために訴訟手続が中断しない場合(民訴法124条2項)、亡当事者の訴訟代理人は、当然に相続人らの代理人として訴訟を遂行できるか。
規範
当事者が死亡した場合、死亡の事実の発生とともに当然に訴訟関係の承継を生じるが、当該当事者に訴訟代理人が存するときは、民事訴訟法上の訴訟手続の中断を生じない(旧民訴法208条、現行民訴法124条2項)。この場合、亡当事者の訴訟代理人であった者は、訴訟承継の結果として新たに当事者となった相続人らの訴訟代理人として訴訟行為をなすことができる。
重要事実
控訴審に訴訟が係属中、当事者Dが死亡し、その両親E及びFが権利義務を承継した。その後、父Eも死亡したため、その妻Fと直系卑属である他の相続人ら(上告人を含む)がさらに相続した。Dには訴訟代理人が付されていたが、原審は特段の受継手続を執ることなく、訴訟承継人らを当事者、亡Dの訴訟代理人を訴訟承継人らの訴訟代理人と表示して判決を言い渡した。これに対し、上告人が手続上の不備を主張して争った。
事件番号: 昭和33(オ)1044 / 裁判年月日: 昭和35年7月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産売買の売主が所有権移転登記手続の代理権を授与した後、受任者が売主の死亡後に代理人として登記を申請した場合、その登記手続は有効である。 第1 事案の概要:上告人の被相続人Dは、本件不動産を被上告人に売却し、その所有権移転登記手続の代理権を姉であるEに授与した。その後、Dが死亡したが、受任者Eは…
あてはめ
Dの死亡により、その権利義務は当然に相続人らに承継されるため、訴訟当事者の地位も相続人らに移転する。本件では亡Dに訴訟代理人が付されていたため、法律上、訴訟手続は中断せず(民訴法124条2項)、受継手続を要しない。したがって、原審が受継手続を執らずに審理を継続したことに瑕疵はない。また、訴訟の継続性と相続人の利益保護の観点から、従前の訴訟代理人は承継後の当事者の代理人としての権限を有する。ゆえに、原判決が訴訟承継人らを当事者として表示し、亡Dの訴訟代理人をその代理人として扱ったことは正当である。
結論
亡当事者の訴訟代理人は、手続が中断しない場合、相続人らの訴訟代理人として訴訟行為をなすことができる。原審の手続に違法はない。
実務上の射程
訴訟代理権は本人の死亡によって消滅しないという原則(民訴法58条1項)を確認するものである。実務上は、相続人の確定を待たずに審理を進行できるため、訴訟経済に資する。ただし、代理人が存在しても、判決の送達については相続人全員(または受継した者)に対してなされる必要がある点に注意を要する。
事件番号: 昭和30(オ)1009 / 裁判年月日: 昭和31年11月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】当事者である会社が合併により消滅した場合であっても、訴訟代理人が存在するときは、民事訴訟法124条2項(現行法。旧法213条)により訴訟手続は中断しない。 第1 事案の概要:第一審被告(被控訴人)であるD銀行について、原審(控訴審)の口頭弁論終結後に合併による消滅が生じた。これに伴い、合併による承…
事件番号: 昭和33(オ)517 / 裁判年月日: 昭和36年12月15日 / 結論: 棄却
不動産の買主が、その売主の相続人に対し、売買を原因として、当該不動産について所有権移転登記を求める訴訟は、その相続人が数人いるときでも、必要的共同訴訟ではない。
事件番号: 昭和58(オ)1362 / 裁判年月日: 昭和63年3月1日 / 結論: 破棄差戻
無権代理人を本人とともに相続した者がその後更に本人を相続した場合においては、本人が自ら法律行為をしたと同様の法律上の地位ないし効果を生ずるものと解するのが相当である。
事件番号: 昭和33(オ)232 / 裁判年月日: 昭和33年10月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】保佐人の同意を欠く被保佐人の訴訟行為は原則として無効であり、将来的に同意が得られる見込みがある等の事情があっても、裁判所は本案判決を行うことはできず、訴えを却下すべきである。 第1 事案の概要:準禁治産者(現在の被保佐人に相当)であった上告人が、保佐人の同意を得ることなく本案の訴えを提起した。上告…