不動産の買主が、その売主の相続人に対し、売買を原因として、当該不動産について所有権移転登記を求める訴訟は、その相続人が数人いるときでも、必要的共同訴訟ではない。
必要的共同訴訟にあたらない事例。
民訴法62条
判旨
不動産の売主が死亡し、複数の者がその義務を共同相続した場合、各相続人が負う所有権移転登記義務は不可分債務である。したがって、買主は共同相続人の一人に対し、その持分のみならず全部の登記義務の履行を請求できる。
問題の所在(論点)
不動産の売主の共同相続人が負担する所有権移転登記義務の性質、および、その義務の履行を求める訴訟が必要的共同訴訟(民事訴訟法40条)にあたるか否か。
規範
不動産の売買契約に基づく所有権移転登記義務は、その性質上、共同相続人の間で分割して履行することができない「不可分債務」にあたる。したがって、共同相続人が複数存在する場合であっても、各相続人は債務の全部について履行義務を負い、債権者は共同相続人の一人に対して全部の履行を請求することが可能である(民法428条参照)。また、当該請求を目的とする訴訟は、全員を被告とする必要のない通常共同訴訟(民事訴訟法38条)である。
重要事実
1. 被上告人は、昭和18年、Dから宅地及び建物を買い受けた。2. その後、売主Dが死亡し、上告人がDの売買契約上の債務を相続した。3. 被上告人は、上告人に対し、売買契約に基づく所有権移転登記の履行を求めて提訴した。4. 上告人は、他にも共同相続人が存在するため、本件訴訟は全員を被告とすべき必要的共同訴訟であると主張し、本案前の抗弁を提出した。
事件番号: 昭和41(オ)488 / 裁判年月日: 昭和44年4月17日 / 結論: 棄却
不動産について、被相続人との間に締結された契約上の義務の履行として、所有権移転登記手続を求める訴訟は、その相続人が数人いるときでも、必要的共同訴訟ではない。
あてはめ
本件において、被上告人が請求しているのは、売主Dから承継された所有権移転登記義務の履行である。不動産の登記義務は、その性質上、共同相続人の一人ひとりがその全部を果たすべき不可分債務と解される。不可分債務においては、各債務者が債務の全体について責任を負うため、債権者は相続人の一部に対してのみ履行を求めることができる。したがって、他の相続人の存否にかかわらず、上告人一人を被告として登記義務の履行を請求することは適法である。
結論
共同相続人による登記義務は不可分債務であり、必要的共同訴訟ではない。よって、上告人一人に対する請求は認められる。
実務上の射程
共同相続された登記義務が不可分債務であることを明示した。答案上は、登記請求の相手方を検討する際や、共同訴訟の形態を判断する際の論拠として使用する。ただし、登記手続の実務(共同申請主義)との整合性から、実効的な登記のためには全員を被告とすることが望ましい点には留意を要する。
事件番号: 昭和39(オ)140 / 裁判年月日: 昭和39年7月16日 / 結論: 棄却
買主が売主の相続人に対し、売買を原因として目的不動産について所有権移転登記を求める訴訟は、右相続人が数人いるときでも、必要的共同訴訟ではない(昭和三六年一二月一五日、民集一五巻一一号二八六五頁参照)。
事件番号: 昭和37(オ)1437 / 裁判年月日: 昭和39年7月28日 / 結論: 棄却
不動産の買主に代位し、その売主の相続人に対し、売買を原因として、当該不動産について所有権移転登記を求める訴訟は、その相続人が一人でない場合においても、必要的共同訴訟ではない。
事件番号: 昭和37(オ)810 / 裁判年月日: 昭和38年12月27日 / 結論: 棄却
売主およびその相続人たるべき者の共有不動産が売買の目的とされた場合において、売主が死亡し、相続人が限定承認をしなかつたときは、相続人は当該売買契約成立当時右不動産に持分を有していたからといつて、その持分についても、右売買契約における売主の義務の履行を拒みえない。
事件番号: 昭和35(オ)1163 / 裁判年月日: 昭和36年3月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】売買契約の目的物である土地が第三者によって競落され、当該第三者のために所有権移転登記がなされた場合、売主の債務は特段の事情のない限り履行不能に陥る。 第1 事案の概要:上告人(売主)は、被上告人(買主)に対して本件土地を売り渡したが、その後、当該土地が訴外Dによって競落された。さらに、当該土地につ…