買主が売主の相続人に対し、売買を原因として目的不動産について所有権移転登記を求める訴訟は、右相続人が数人いるときでも、必要的共同訴訟ではない(昭和三六年一二月一五日、民集一五巻一一号二八六五頁参照)。
必要的共同訴訟にあたらないとされた事例。
民訴法62条
判旨
不動産の買主が、売主の共同相続人らに対し、売買を原因とする所有権移転登記を求める訴訟は、必要的共同訴訟ではない。
問題の所在(論点)
不動産の買主が、売主の数人の相続人に対し、売買を原因とする所有権移転登記を求める訴訟は、民事訴訟法40条1項の必要的共同訴訟にあたるか。
規範
必要的共同訴訟とは、訴訟の目的が共同訴訟人の一人及び全員に対して合一に確定すべき場合(民事訴訟法40条1項)を指す。不動産の移転登記義務は、相続によって各相続人に分割されるものであり、各相続人がその相続分に応じて負う義務の履行を求める訴えについては、必ずしも全員を被告とする必要はなく、合一確定の要請はないと解される。
重要事実
不動産の買主(被上告人)が、売主の相続人である被告(上告人)に対し、売買契約に基づく所有権移転登記手続を求めて提訴した。売主には複数の相続人が存在したが、本件ではそのうちの一人を被告として訴訟が提起された。上告人は、相続人が複数いる場合には全員を被告とする必要がある必要的共同訴訟であると主張して、原判決の違法を訴えた。
事件番号: 昭和41(オ)488 / 裁判年月日: 昭和44年4月17日 / 結論: 棄却
不動産について、被相続人との間に締結された契約上の義務の履行として、所有権移転登記手続を求める訴訟は、その相続人が数人いるときでも、必要的共同訴訟ではない。
あてはめ
最高裁は、先例(昭和36年12月15日判決)を引用し、本件のような登記請求訴訟は、相続人が複数いる場合であっても必要的共同訴訟ではないと判断した。これは、登記請求権が実体法上の権利義務関係に基づき、各相続人がその持分に応じて負担する性質のものであり、共同被告全員に対して同一の判決を下さなければならない関係(固有必要的共同訴訟)にも、判決の矛盾を避けるべき関係(類似必要的共同訴訟)にも当たらないことを前提としている。したがって、相続人の一人を被告として提起することは適法である。
結論
不動産の買主による売主の共同相続人に対する移転登記請求訴訟は、必要的共同訴訟ではない。したがって、共同相続人の一部を被告とする訴訟提起も有効である。
実務上の射程
本判決は、共同相続人に対する登記請求が通常共同訴訟であることを明確にしたものである。実務上、一部の相続人とだけ和解する場合や、一部の相続人のみが登記に応じない場合に、当該相続人のみを被告として提訴できることを裏付ける。もっとも、全持分の移転を確実にするには、最終的に全員を被告とするか、順次全員に対して勝訴判決を得る必要がある点に注意を要する。
事件番号: 昭和33(オ)517 / 裁判年月日: 昭和36年12月15日 / 結論: 棄却
不動産の買主が、その売主の相続人に対し、売買を原因として、当該不動産について所有権移転登記を求める訴訟は、その相続人が数人いるときでも、必要的共同訴訟ではない。
事件番号: 昭和37(オ)1437 / 裁判年月日: 昭和39年7月28日 / 結論: 棄却
不動産の買主に代位し、その売主の相続人に対し、売買を原因として、当該不動産について所有権移転登記を求める訴訟は、その相続人が一人でない場合においても、必要的共同訴訟ではない。
事件番号: 昭和36(オ)1405 / 裁判年月日: 昭和38年10月1日 / 結論: 棄却
農地の買主が、売主の相続人に対し、知事に対する許可申請手続協力義務の履行を求める訴訟は、その相続人が数人いるときでも、必要的共同訴訟ではない。
事件番号: 昭和48(オ)369 / 裁判年月日: 昭和50年3月6日 / 結論: 棄却
買主に対する土地所有権移転登記手続義務を相続した共同相続人の一部の者が右義務の履行を拒絶しているため、買主が相続人全員による登記手続義務の履行の提供があるまで代金全額について弁済を拒絶する旨の同時履行の抗弁権を行使している場合には、他の相続人は、自己の相続した代金債権を保全するため、右買主が無資力でなくても、これに代位…