農地の買主が、売主の相続人に対し、知事に対する許可申請手続協力義務の履行を求める訴訟は、その相続人が数人いるときでも、必要的共同訴訟ではない。
必要的共同訴訟にあたらない事例。
民訴法62条
判旨
農地売買における知事の許可申請協力義務を相続した共同相続人は不可分債務者の関係に立ち、当該義務の履行を求める訴訟は必要的共同訴訟に当たらない。
問題の所在(論点)
農地売買の許可申請協力義務を相続した複数の相続人に対する履行請求訴訟が、民事訴訟法上の必要的共同訴訟に該当するか。
規範
債務の目的がその性質上不可分である場合、各債務者は不可分債務者の関係に立つ(民法428条参照)。不可分債務に係る訴訟は、各債務者が個別に管理処分権を有しており、合一確定の必要性も認められないため、固有必要的共同訴訟にも類似必要的共同訴訟にも当たらない(通常共同訴訟である)。
重要事実
上告人はDとの間で本件土地の売買契約を締結した。Dは知事に対する許可申請協力義務を負っていたが、その履行前に死亡した。Dの相続人である被上告人ら(B1、B2、E)が当該義務を承継したとして、上告人はこれら相続人全員を被告として義務履行を求める訴訟を提起した。これに対し、本件訴訟の性質が必要的共同訴訟に当たるか否かが争点となった。
事件番号: 昭和36(オ)775 / 裁判年月日: 昭和38年11月12日 / 結論: 破棄自判
知事の許可を条件とする農地の売買契約において、これを転売したときには売主は直接転買のために右許可申請手続をする旨の合意をしても、右合意はその効力を生じない。
あてはめ
本件における知事への許可申請協力義務は、性質上、分立して履行することができない不可分な給付を目的とするものである。したがって、これを相続した被上告人らは不可分債務者の関係に立つと解される。不可分債務は各債務者が独立して全給付の義務を負うものであり、訴訟において当事者全員を被告とすることや合一に確定することを法律上強制されるものではない。
結論
本件訴訟は、固有必要的共同訴訟にも類似必要的共同訴訟にも当たらず、必要的共同訴訟ではない。
実務上の射程
不可分債務・連帯債務の共同被告訴訟が通常共同訴訟であることを確認する基本的判例である。答案上は、共同訴訟の類型を論じる際、実体法上の権利義務の性質(管理処分権の帰属)から、必要的共同訴訟該当性を否定する論拠として使用する。
事件番号: 昭和33(オ)517 / 裁判年月日: 昭和36年12月15日 / 結論: 棄却
不動産の買主が、その売主の相続人に対し、売買を原因として、当該不動産について所有権移転登記を求める訴訟は、その相続人が数人いるときでも、必要的共同訴訟ではない。
事件番号: 昭和39(オ)140 / 裁判年月日: 昭和39年7月16日 / 結論: 棄却
買主が売主の相続人に対し、売買を原因として目的不動産について所有権移転登記を求める訴訟は、右相続人が数人いるときでも、必要的共同訴訟ではない(昭和三六年一二月一五日、民集一五巻一一号二八六五頁参照)。
事件番号: 昭和41(オ)488 / 裁判年月日: 昭和44年4月17日 / 結論: 棄却
不動産について、被相続人との間に締結された契約上の義務の履行として、所有権移転登記手続を求める訴訟は、その相続人が数人いるときでも、必要的共同訴訟ではない。
事件番号: 昭和37(オ)1437 / 裁判年月日: 昭和39年7月28日 / 結論: 棄却
不動産の買主に代位し、その売主の相続人に対し、売買を原因として、当該不動産について所有権移転登記を求める訴訟は、その相続人が一人でない場合においても、必要的共同訴訟ではない。