不動産について、被相続人との間に締結された契約上の義務の履行として、所有権移転登記手続を求める訴訟は、その相続人が数人いるときでも、必要的共同訴訟ではない。
共同相続人に対して契約上の義務の履行として所有権移転登記手続を求める訴訟と必要的共同訴訟の成否
民訴法62条
判旨
不動産贈与者の相続人が複数いる場合、受贈者から当該相続人らに対して所有権移転登記手続を求める訴訟は、必要的共同訴訟ではなく通常共同訴訟に該当する。また、相続人が負担する所有権移転登記手続義務は、性質上不可分債務と解される。
問題の所在(論点)
共同相続人を被告として不動産の所有権移転登記手続を請求する訴訟が、必要的共同訴訟(民事訴訟法40条1項)に該当するか、あるいは通常共同訴訟にすぎないか。
規範
不動産について被相続人との間に締結された契約上の義務の履行を主張して、その相続人に対して所有権移転登記手続を求める訴訟は、相続人が数人いる場合であっても固有必要的共同訴訟ではない(通常共同訴訟である)。また、当該移転登記手続義務は性質上、各相続人が全部の責任を負う不可分債務として扱われる。
重要事実
訴外GはDに対し、本件土地を贈与したが、登記未了のまま死亡した。Gの相続人として本件選定者ら(複数人)が共同相続した。Dの権利を承継した被上告人は、相続人ら(選定当事者Aほか)に対し、贈与を原因とする所有権移転登記手続を求めて提訴した。これに対し、被告側(上告人)は、相続人全員を被告とする必要的共同訴訟であるべき旨を争った。
事件番号: 昭和33(オ)517 / 裁判年月日: 昭和36年12月15日 / 結論: 棄却
不動産の買主が、その売主の相続人に対し、売買を原因として、当該不動産について所有権移転登記を求める訴訟は、その相続人が数人いるときでも、必要的共同訴訟ではない。
あてはめ
本件訴訟は、被上告人が贈与契約に基づく権利承継を理由として、贈与者の相続人らに対し契約上の義務(登記移転義務)の履行を求めているものである。相続人が複数いる場合に、管理処分権が共同相続人に帰属するとしても、登記義務は各相続人がその全部の履行責任を負うべき不可分債務であると解される。したがって、訴訟物である登記請求権の行使において、共同相続人全員を被告と強制する必要はなく、合一確定の必要性も認められない。
結論
不動産の共同相続人に対する所有権移転登記請求訴訟は、必要的共同訴訟ではない。したがって、一部の相続人のみが上告した本件において、上告していない他の相続人に上告の効力は及ばない。
実務上の射程
共同相続人に対する所有権移転登記請求(契約に基づく場合)は通常共同訴訟である。これに対し、共有権自体を確認する訴訟や共有物の分割訴訟が固有必要的共同訴訟とされる点と対比して整理すべきである。答案上は、数人の被告に対する請求が不可分債務の履行請求であることを理由に、通常共同訴訟として処理する根拠として用いる。
事件番号: 昭和39(オ)140 / 裁判年月日: 昭和39年7月16日 / 結論: 棄却
買主が売主の相続人に対し、売買を原因として目的不動産について所有権移転登記を求める訴訟は、右相続人が数人いるときでも、必要的共同訴訟ではない(昭和三六年一二月一五日、民集一五巻一一号二八六五頁参照)。
事件番号: 昭和37(オ)1437 / 裁判年月日: 昭和39年7月28日 / 結論: 棄却
不動産の買主に代位し、その売主の相続人に対し、売買を原因として、当該不動産について所有権移転登記を求める訴訟は、その相続人が一人でない場合においても、必要的共同訴訟ではない。
事件番号: 昭和36(オ)1405 / 裁判年月日: 昭和38年10月1日 / 結論: 棄却
農地の買主が、売主の相続人に対し、知事に対する許可申請手続協力義務の履行を求める訴訟は、その相続人が数人いるときでも、必要的共同訴訟ではない。
事件番号: 昭和34(オ)650 / 裁判年月日: 昭和41年11月25日 / 結論: その他
入会権確認の訴は、入会権が共有の性質を有するかどうかを問わず、入会権者全員で提起することを要する固有必要的共同訴訟である。