判旨
売買契約の成立が特定の代金支払を条件としていた場合において、当該期間内に支払がなされなかったときは、売買契約の成立そのものが否定される。
問題の所在(論点)
「約定期間内の代金支払」を条件とする譲渡の合意において、支払がなされなかった場合に売買契約が成立したといえるか。また、それを前提とする請求異議の訴えは認められるか。
規範
契約の成否が争われる場合、当事者の意思表示の合致を客観的な事実に基づき解釈すべきである。特に、一定の期間内に代金全額を支払うことを条件として目的物を売り渡す旨の合意がなされた場合には、当該期間内の支払が契約成立の不可欠な要素(停止条件的な性質)となり、期限内の履行がなければ契約は有効に成立しない。
重要事実
上告人と被上告人の間で、本件家屋及びその敷地の譲渡に関する交渉が持たれた。その際、約定の期間内に上告人が代金全額を間違いなく支払うのであれば、被上告人はこれらを売り渡すことを承諾するという内容の合意がなされた。しかし、上告人は当該期間内に約定の代金を支払わなかった。上告人は、売買契約は単純に成立したと主張して、本件和解調書の執行力排除を求める請求異議の訴えを提起した。
あてはめ
本件における当事者の合意は、単なる無条件の売買契約ではなく、「期間内に代金全額を支払う」ことを前提に売渡しを承諾するという性質のものである。上告人はこの約定期間内に代金を支払っていない。そうであれば、契約成立のための前提条件が満たされていない以上、当事者間に本件家屋等の売買契約が成立したと認めることはできない。したがって、契約の成立を前提として和解調書の執行力排除を求める上告人の主張は、その前提を欠くものである。
結論
約定期間内に代金の支払がなされなかった以上、売買契約は成立しておらず、これに基づく請求異議の訴えは理由がない。本件上告は棄却される。
実務上の射程
契約の成立に特定の条件(特に期限内の履行)が付されている事案において、その不成就が契約自体の不成立を招くことを示す。請求異議の訴えにおいて、異議の理由となる実体法上の権利発生(契約成立)を否定する際の論法として活用できる。
事件番号: 昭和37(オ)1203 / 裁判年月日: 昭和40年7月8日 / 結論: その他
競売法による競売手続には民訴法第五四五条は準用されないものと解するのが相当である。
事件番号: 昭和34(オ)170 / 裁判年月日: 昭和37年4月10日 / 結論: 棄却
借家契約を合意解除するとともに、賃貸人において賃借人に対し二年間の明渡猶予を認め、賃借人において賃貸人に対し造作買収請求権を放棄する旨を定めた和解契約は、借家法第六条に違反しない。