行政訴訟受任の弁護士が法定の出訴期間を徒過して提訴した場合弁護士報酬金請求が認容されなかつた事例
判旨
弁護士が委任を受けて提起した行政訴訟において、出訴期間経過後に取消訴訟を提起し、かつ無効確認の主張も行わなかった場合、当該訴訟は不適法であり、委任者に利益をもたらさないため、特約がない限り報酬請求権は認められない。
問題の所在(論点)
出訴期間を徒過した不適法な行政訴訟を提起し、無効確認の主張も行わなかった弁護士について、委任事務の成功に基づく報酬請求権(民法648条)が認められるか。
規範
弁護士の報酬請求権は、委任契約に基づく事務処理の成功(委任者の利益となる結果の発生)を前提とする。行政訴訟において、出訴期間の定めがある取消訴訟と期間の定めのない無効確認訴訟は性質を異にするものであり、事案に応じて適切な訴訟を選択すべき義務がある。客観的に不適法な訴えを提起し、適切な主張を怠ったことにより敗訴した場合には、事務処理の成功とは認められない。
重要事実
上告人(弁護士)は、被上告人から農地買収処分の効力を争う行政訴訟の委任を受けた。上告人は、農地買収計画および買収処分の「取消し」を求める訴訟を提起したが、これは出訴期間経過後であった。また、上告人は当該訴訟において買収処分の「無効確認」を求める主張を一切行わなかった。その結果、訴訟は不適法として退けられた。その後、上告人は被上告人に対し、当該訴訟の提起等に関する報酬金の支払いを求めて提訴した。
あてはめ
上告人が提起した訴訟は、農地買収計画等の取消しを求めるものであったが、出訴期間経過後に提起されており客観的に不適法であった。また、上告人は期間制限のない無効確認の主張も行っておらず、結果として被上告人に何ら利益をもたらしていない。取消訴訟と無効確認訴訟は出訴期間の有無において明確に異なり、いずれを選択すべきかは事案ごとに判断されるべきであるが、本件では適法な訴訟運営がなされたとはいえない。したがって、報酬契約の成立が否定されるか、あるいは報酬請求の前提となる「訴の成功」があったとは認められない。
結論
上告人の報酬請求は認められない。不適法な訴えの提起は委任の目的に資する成功とはいえず、上告を棄却するのが相当である。
実務上の射程
弁護士の忠実義務・善管注意義務違反が報酬請求権に及ぼす影響を示唆する事例である。行政訴訟において取消訴訟の期間を徒過した場合に、無効確認訴訟への切り替えや主張の追加を怠ることは、報酬請求権を喪失させる重大な過失となり得る。実務上は、訴訟選択の誤りが「成功」の成否に直結することを留意すべきである。
事件番号: 昭和26(オ)302 / 裁判年月日: 昭和29年2月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】条件の成就によって利益を受けるべき者が、相手方の妨害によってその条件の成就を妨げられたと主張して損害賠償を請求する場合、相手方が故意に条件の成就を妨げたという事実が認められない限り、当該請求は認められない。 第1 事案の概要:上告人(報酬請求権者)は、被上告人との間で特定の条件が成就した場合に報酬…