当事者本人が別件訴訟において訴訟代理人として本件農地の坪当り時価を金五〇〇〇円と陳述したことをもつて、本件訴訟において、右農地の坪当り時価を同額と認定する資料に供しても何ら違法でない。
当事者本人が別件訴訟において訴訟代理人として或る事項を陳述した事実を証拠とすることの可否。
民訴法第2編第3章
判旨
弁護士報酬を訴訟物の価額の一定割合と定める契約において、特約がない限り報酬額算定の基準時期を契約締結時とする経験則は存在せず、履行期(勝訴確定時等)の時価を基準とすることを認めた。
問題の所在(論点)
弁護士報酬を訴訟物の価額の割合で定める契約において、その算定基準となる時期(価格算定の基準時)はいつか。また、契約締結時を基準とすべきという経験則が存在するか。
規範
弁護士報酬の額を訴訟物の価額を基準として定める場合、その算定基準となるべき時期は、契約当事者の合理的な意思解釈によって決せられるべきであり、当然に報酬契約締結時を基準とすべきであるという経験則は存在しない。契約の趣旨が、事件の成功という結果が生じた時点での成果を分配する点にあると解される場合には、履行期(判決確定時等)の時価を基準とすることも許容される。
重要事実
弁護士(被上告人)と依頼者(上告人)は、農地の権利移動制限解除等に関する行政訴訟の報酬について、勝訴確定時に権利移動制限が解除されない場合には「履行期到来当時の訴訟物価額の二割」を支払う旨の報酬契約を締結した。その後、勝訴が確定した昭和30年4月30日時点では依然として権利移動の制限が存在したため、被上告人は同日の時価を基準とした報酬金の支払を求めた。これに対し上告人は、報酬額は特約のない限り契約締結時を基準にすべきであり、また債務者に選択権がある選択債権である旨などを主張して争った。
あてはめ
本件報酬契約の趣旨は、行政訴訟の勝訴確定または勝訴の見込みがないことが確定した時期を履行期とし、その時点で権利移動制限が解除されない場合には、履行期到来当時の訴訟物価額の2割相当を報酬とするものであったと認められる。このような契約内容の認定は証拠に基づき首肯できるものであり、契約締結時を基準とすべきとする上告人の主張は、そのような経験則が認められない以上、採用できない。また、仮に債務者が選択権を有するとしても、制限解除が困難な状況下では、履行期における価額の2割相当の金員債権が発生していることは明らかである。
結論
報酬算定の基準時は契約の解釈により決せられ、本件では履行期(勝訴確定時)の時価を基準として報酬額を算定すべきである。
実務上の射程
弁護士報酬のみならず、目的物の価額に比例して金額が定まる債権一般において、基準時に関する合意が不明確な場合の意思解釈の指針となる。特に「成功報酬」の性質を有する事案では、契約締結時ではなく、具体的利益が確定した時点(履行期)を基準とすることが合理的であるとする判断枠組みとして活用できる。
事件番号: 昭和42(オ)1384 / 裁判年月日: 昭和43年9月3日 / 結論: 棄却
一、不動産売買契約の媒介を委託する契約に、報酬を支払う約定があつても、受任者の利益を目的とする委任契約とはいえないから、依頼者は、民法第六五一条第一項に基づき右契約を解除することができる。 二、民法第六五一条第二項の「不利ナル時期」とは、その委任の内容である事務処理自体に関して受任者が不利益を被るべき時期と解すべく、事…