(省略)
宅地建物取引業者の報酬について法定の最高額をもつて相当額と認めた原審の判断に審理不尽・理由不備の違法があるとされた事例
宅地建物取引業法(昭和39年法律第166号による改正前のもの)17条,民法648条,商法550条
判旨
不動産媒介報酬の特約がない場合、宅地建物取引業法に基づく報酬規定はあくまで最高限度額を定めたものに過ぎず、相当報酬額は取引額や媒介の難易等の諸般の事情を総合考慮して決定すべきである。
問題の所在(論点)
不動産売買の媒介において報酬額の特約がない場合、宅地建物取引業法等に基づく報酬規定の最高限度額をそのまま相当報酬額として認めることができるか。
規範
宅地建物取引業法に基づき定められた報酬規定は、業者が不当に多額の報酬を受領することを抑止する目的でその最高限度額を定めたものである。したがって、報酬額の合意がない場合に裁判所が定めるべき相当報酬額は、取引額、媒介の難易、期間、労力その他諸般の事情を斟酌して定めるべきであり、特段の合理的根拠がない限り、当然に規定の最高額とするべきではない。
重要事実
被上告人(業者)は上告人(依頼者)から土地売買の媒介を依頼され、これを完了した。当事者間に報酬額に関する特別の約定は存在しなかった。原審は、愛媛県規則により定められた報酬の最高限度額をそのまま相当報酬額として認容したため、上告人がこれを不服として上告した。
あてはめ
媒介報酬は、具体的案件における取引額のみならず、媒介に要した難易度、期間、労力等の諸般の事情を総合して算出されるべき性質のものである。本件において、原審はこれらの諸事情を具体的に検討することなく、単に当事者が最高額による意思を有していたと速断して、上限額いっぱいの報酬を認容した。これは、相当額を基礎付ける合理的根拠の審理を尽くしていないものといえる。
結論
報酬規定の最高額を当然に相当報酬額と解することはできず、諸般の事情を考慮して具体的金額を確定すべきである。本件は審理不尽・理由不備があるため、原判決を破棄し、差し戻す。
実務上の射程
商法512条等に基づき報酬請求権が認められる事案で、金額の合意がない場合の「相当額」の算定手法を示す。答案上は、宅建業法の告示上限はあくまで「上限」であって、具体的算定においては労力等の個別事情を摘示・評価する必要があることを指摘する際に用いる。
事件番号: 昭和44(オ)363 / 裁判年月日: 昭和45年2月26日 / 結論: 棄却
一個の売買に関し宅地建物取引業者である媒介者が数人あり、各媒介者がその数人の関与を予め承諾しているときは、右媒介者らが受けるべき報酬の合計額は、法定の最高報酬額をこえることができない。