判旨
第一審で主張していた請求原因の不備や不明確な点を、控訴審において補完・明確化したとしても、請求の同一性が維持されている限り、新たな訴えの提起ではなく請求の変更として許容される。
問題の所在(論点)
第一審における請求原因の主張を、控訴審において事実関係の詳細や法律的構成を改めて主張した場合に、請求の同一性が維持されているといえるか(訴えの変更の適法性および判決の対象範囲)。
規範
請求の同一性は、訴訟上の請求の基礎となる事実関係の共通性に基づいて判断される。第一審での主張が不備または不明確であった場合でも、控訴審における新たな主張がその不備を補完し、または内容を明確化するにとどまるものであれば、請求の同一性は維持されており、民事訴訟法上の請求の変更(当時の旧法における変更法理)として適法に判決の対象となる。
重要事実
上告人の亡父Dは、被上告人に対し不動産の所有権移転登記をしたが、上告人は第一審において「担保目的の借入れを申し込んだが金銭授受がないまま登記のみがなされた」と主張し、所有権確認等を求めた。第一審で棄却されたため上告人は控訴し、控訴審では「売買契約が締結されたが代金が未払である」として代金不履行による解除を主張し、所有権の復帰を求めた。これに対し、第一審の請求と控訴審の請求が同一性を欠くのではないかが争点となった。
あてはめ
上告人は、第一審では「金銭授受のない登記」という抽象的な不備を主張していたが、控訴審ではこれを「売買契約に基づく代金未払および解除」と具体化した。これは、同一の不動産をめぐる所有権の帰属という紛争の基礎を共通にするものであり、第一審における請求原因の不備や不明確な点を補完・明確化したものにすぎない。したがって、請求の同一性は維持されており、第一審の判決対象と控訴審の審判対象は連続したものと認められる。
結論
請求の同一性は維持されており、原審が本件請求について実体判断を示したことに違法はないため、上告を棄却する。
事件番号: 昭和28(オ)748 / 裁判年月日: 昭和30年5月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】控訴審における訴えの変更(請求原因の追加)が認められるためには、従前の請求とその基礎を同じくし、かつ、著しく訴訟手続を遅延させないことが必要である。 第1 事案の概要:上告人らが相手方に対して提起した訴訟において、控訴審段階で請求原因の追加が行われた。原審は、この追加が従前の請求とその基礎が同じで…
実務上の射程
控訴審における攻撃防御方法の提出や請求の構成変更が、第一審の請求とどの程度の関連性を有すれば「同一性」が認められるかを示す一例である。答案上は、訴えの変更(民訴法143条)や控訴審における新主張の許容性を論じる際、基礎となる事実関係が共通していれば、請求原因の補完・明確化は請求の同一性を損なわない根拠として活用できる。
事件番号: 昭和32(ヤ)30 / 裁判年月日: 昭和33年5月24日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】再審事由としての判断遺脱(旧民訴法420条1項9号、現行338条1項9号)は、確定判決において当事者が主張した重要な攻撃防御方法について判断を示さなかった場合に認められるが、上告審が原判決の事実認定に違法がない旨を判示した場合には、判断遺脱は認められない。 第1 事案の概要:再審原告は、本件山林の…
事件番号: 昭和29(オ)464 / 裁判年月日: 昭和31年5月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】本件不動産の所有権移転登記が寄託の趣旨でなされたとの主張に対し、原審がそのような事実を認定していない以上、その前提を欠く論旨は上告理由として認められない。 第1 事案の概要:上告人は、本件不動産の所有権移転登記が「寄託」の意味でなされたものであると主張し、原判決の判断を不服として上告した。しかし、…
事件番号: 昭和33(オ)736 / 裁判年月日: 昭和35年2月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】所有権移転登記請求訴訟において、登記原因を贈与から売買や代物弁済に変更することは、所有権に基づく請求という同一の訴訟物に関する主張の変更にすぎず、請求の変更(民訴法143条)には当たらない。 第1 事案の概要:被上告人(原告)は、本件山林の所有権移転登記を求めて提訴した。当初は登記原因を「贈与」と…