第二審において、訴の交換的変更が行われた場合において、相手方が右変更に異議ない旨を述べ、新請求に対し請求棄却を求める旨申し立てたときには、第一審における旧訴については、相手方の暗黙の同意のもとに訴の取下がなされたものと解するのが相当である(昭和四一年一月二一日第二小法廷判決、民集二〇巻一号九四頁参照)。
訴の交換的変更と旧訴の取下
民訴法236条
判旨
控訴審における訴の交換的変更は、相手方が異議なく新訴に応訴した場合には旧訴の取下げの合意を含むものと解され、請求の基礎に変更がない限り、審級の利益を害さず適法である。
問題の所在(論点)
控訴審において訴の交換的変更がなされた場合に、旧訴の取下げの効力が認められるか。また、かかる変更が審級の利益(裁判所法16条)や控訴審の審理範囲(民訴法296条、304条等)に抵触しないか。
規範
控訴審における訴の変更が交換的変更としてなされた場合、相手方が異議なく新訴につき請求棄却を申し立てて応訴したときは、旧訴については相手方の黙示の同意による取下げがあったものと解する。また、請求の基礎に変更がない場合には、第一審において当該基礎部分の審理がなされているため、相手方の審級の利益を損なうものではなく、控訴審は新訴について実質的な第一審として裁判をなすべきである。
重要事実
被上告人は第一審で建物の所有権確認等を求めていたが、控訴審においてこれを取り下げ、新たに建物所有権移転登記手続等を求める訴えへと変更(交換的変更)した。上告人はこの変更に異議を述べず、新請求に対して請求棄却を求める旨の申立てを行った。これに対し上告人は、控訴審での訴の変更が審級の利益を害し、また控訴審の審理範囲を定める規定に違反すると主張して上告した。
あてはめ
本件では、被上告人が控訴審で請求を変更し、上告人がこれに異議なく応訴した事実が調書により明らかである。これは旧訴の取下げに対する「暗黙の同意」があったといえる。また、新旧両請求は同一の建物を巡る紛争であり、請求の基礎に変更がないと認められる。この場合、第一審の審理成果が活用可能であり、上告人に不測の不利益はないため、審級の利益を害することはない。したがって、旧訴を対象とする第一審判決は失効しており、控訴裁判所が新訴について実質的な第一審として判断を下すことは、控訴審の構造上当然の帰結である。
結論
控訴審における訴の交換的変更は適法であり、旧訴は取下げにより終了し、控訴裁判所は新訴について審理判決を行うことができる。
実務上の射程
控訴審における訴の変更(143条、297条)の限界を示す重要判例。特に「請求の基礎」(143条1項)が同一であれば審級の利益を害さないとする法理は、実務上のスタンダードである。答案では、被告の同意や請求の基礎の同一性を指摘した上で、控訴審が新訴を直接審理できる根拠として引用する。
事件番号: 昭和40(オ)234 / 裁判年月日: 昭和40年8月2日 / 結論: 棄却
控訴審において訴を変更し、旧訴を取り下げた場合、判決主文において、旧訴を棄却した第一審判決取消の宣言をすることは違法ではない。
事件番号: 昭和30(オ)171 / 裁判年月日: 昭和34年12月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】訴えの交換的変更がなされた場合に、相手方が異議なく直ちに応答陳述をしたときは、変更による旧請求の消滅および新請求への移行が適法に認められる。また、予備的請求の追加時において、その基礎となる事実が既に主張・提出されており、訴訟を著しく遅延させるおそれがない場合には、訴えの変更は適法である。 第1 事…
事件番号: 昭和44(テ)23 / 裁判年月日: 昭和44年9月26日 / 結論: 棄却
事件が控訴審たる地方裁判所に係属中、訴の変更により新請求が追加提起された場合において、同裁判所が新訴に対してする判断は実質上初審としてするものではあるが、第二審としてした判断であり、したがつて、これに対し高等裁判所にする不服申立は上告であつて控訴ではない。