第一審において訴の変更による新訴の提起がされた場合において、新訴のみにつき判決がされたときは、旧訴は取り下げられたか、請求の放棄がされたか、またはなお第一審に係属するかのいずれかであり、旧訴につき第二審が判断を加えないのは相当である。
訴の変更と旧訴に対する判断
民訴法232条,民訴法236条,民訴法203条
判旨
訴の交換的変更において、旧訴の取下げが有効か否かにかかわらず、裁判所が追加された新訴についてのみ判断し、旧訴について判断を加えないことは適法である。
問題の所在(論点)
訴の交換的変更がなされた際、旧訴の取下げについて被告の同意が得られず取下げの効力が生じない場合において、裁判所が追加された新訴のみについて判決し、旧訴を判決の対象から除外することは許されるか。
規範
訴の追加的変更は、旧訴の係属中に新訴を併合提起するものである。交換的変更において旧訴を撤回する意思がある場合、(1)旧訴の取下げが有効なら旧訴は初めから係属しなかったものとみなされ、(2)取下げが無効なら旧訴はなお従前の審級に係属し裁判の脱漏として補充判決(民訴法258条)の対象となり、(3)請求の放棄であれば放棄調書の作成を求めるべき問題となる。したがって、いずれの場合も、裁判所が新訴についてのみ判決を行い、旧訴に判断を加えないことは手続上相当である。
重要事実
被上告人(原告)は、当初、土地所有権に基づく建物収去土地明渡を求めていたが、後に賃貸借終了に基づく請求を「追加」するとともに、当初の主張を「撤回」すると主張した(交換的変更の態様)。これに対し、上告人(被告)は撤回に異議を述べた。第一審は追加された請求のみについて判断して認容判決を言い渡し、原審もこれを維持した。上告人は、旧訴の取下げについて被告の同意がない以上、旧訴に対する判断を遺脱した判決は違法であると主張して上告した。
事件番号: 昭和39(オ)573 / 裁判年月日: 昭和40年12月2日 / 結論: 棄却
訴の変更があつた場合においては、従前の訴訟資料はそのまま引きつがれると解するのが相当である。
あてはめ
被上告人は旧訴の請求を撤回し新訴のみの審判を求める意思を有していた。仮に被告の異議により旧訴の取下げの効力が生じていないとしても(上記(2)の場合)、旧訴は依然として第一審に係属しているにすぎない。この場合、当事者は第一審に対し裁判の脱漏があるとして補充判決を求めるべきであり、新訴についてのみ判断した原判決自体に判断遺脱の違法があるとはいえない。また、仮に取下げが有効であれば(上記(1)の場合)、旧訴は消滅しているため判断不要であることは当然である。
結論
旧訴について原審が判断を加えなかったのは相当であり、訴訟手続に違法はない。上告棄却。
実務上の射程
実務上、交換的変更は「旧訴の取下げ」と「新訴の追加的併合」の複合形態と解される。被告が取下げに不同意の場合、旧訴は依然として係属し続けるが、判決書において旧訴について触れられていなくても、それは補充判決による解決の問題であって、新訴に対する判決そのものを破棄させる理由にはならないことを示している。
事件番号: 昭和40(オ)234 / 裁判年月日: 昭和40年8月2日 / 結論: 棄却
控訴審において訴を変更し、旧訴を取り下げた場合、判決主文において、旧訴を棄却した第一審判決取消の宣言をすることは違法ではない。
事件番号: 昭和44(オ)540 / 裁判年月日: 昭和46年3月11日 / 結論: 棄却
一、第一審において仮執行宣言の申立が却下された場合には、附帯控訴により不服の申立をなすことを妨げない。 二、右附帯控訴にもかかわらず、控訴裁判所において仮執行の宣言が相当でないと判断するときは、その旨を判決の理由中において説示すれば足り、判決の主文において附帯控訴を棄却する旨を宣言する要はない。
事件番号: 昭和31(オ)358 / 裁判年月日: 昭和33年4月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】控訴審において訴えの取下げがあった場合、その部分に関する第一審判決は当然に失効するため、控訴審は残余の部分についてのみ審理・判断を行えば足りる。 第1 事案の概要:上告会社(被告)に対し、金員支払の請求および土地明渡の請求がなされていた事案。控訴審(原審)において、金員支払請求の全部および土地明渡…