民訴法二三七条二項にいう「同一ノ訴」とは、単に当事者及び訴訟物を同じくするだけではなく、訴の利益又は必要性の点についても事情を一にする訴をいう。
民訴法二三七条二項にいう「同一ノ訴」の意義
民訴法237条2項
判旨
再訴禁止の原則(民訴法262条2項)にいう「同一の訴え」とは、当事者及び訴訟物が同一であるだけでなく、訴えの利益や必要性についても事情を同一にする訴えを指し、再訴を正当化する新たな必要性がある場合には適用されない。
問題の所在(論点)
終局判決後に訴えを交換的に変更(取下げ)した後に、同一の訴訟物について提起された新訴が、民事訴訟法262条2項の再訴禁止の原則に抵触し不適法となるか。特に「同一の訴え」の意義が問題となる。
規範
民事訴訟法262条2項(旧237条2項)は、終局判決後に訴えを取り下げて裁判を徒労に帰せしめたことへの制裁および紛争の蒸し返し防止を目的とする。したがって、同項にいう「同一の訴え」とは、単に当事者および訴訟物が同一であるだけでなく、訴えの利益または必要性の点についても事情を同一にする訴えを意味する。たとえ訴訟物が同一であっても、再訴の提起を正当ならしめる「新たな利益または必要性」が存するときは、同項の適用はない。
重要事実
土地所有者である被上告人は、建物所有者Dに対し建物収去土地明渡請求の訴え(旧訴)を提起し第一審で勝訴した。控訴審において、Dから「増改築により旧建物は消滅した」との主張がなされたため、被上告人は建物収去請求を維持できないと誤認し、賃借権不存在確認請求へと訴えを交換的に変更(=旧訴の取下げ)し、判決が確定した。その後、Dが従前の主張を翻して建物の所有権を主張し始めたため、被上告人は再度、Dに対し同一の建物収去土地明渡を求める本件新訴を提起した。
あてはめ
本件では、被上告人が旧訴を取り下げたのは、Dによる「建物消滅」という主張により建物の附合関係を誤認したためであり、その誤認には無理からぬ事情がある。また、別件訴訟の確定後にDが再び建物の自己所有を主張するに至った以上、被上告人において、再度建物の収去を求める必要性が生じたといえる。このような事情の変化に照らせば、本件新訴は旧訴と訴えの必要性において事情を異にしており、再訴を提起すべき正当な必要性が認められる。
結論
本件新訴は「同一の訴え」には当たらず、再訴禁止の原則には抵触しないため、適法である。
実務上の射程
再訴禁止の原則が問題となる事案において、形式的に当事者・訴訟物が同一であっても、訴えの取下げに至った経緯やその後の被告の態度、事情の変化を拾い「再訴を正当化する新たな必要性」を論証する際のリーディングケースとして活用する。交換的変更が旧訴の取下げを伴う点についても言及が必要である。
事件番号: 昭和49(オ)163 / 裁判年月日: 昭和52年3月24日 / 結論: 棄却
後訴における被告の主張及び反訴請求が先に被告が提起した、右反訴と訴訟物を異にする前訴の実質上のむし返しであり、かつ、原判示の事情があるときは、後訴における被告の主張及び反訴請求は、信義則に反し許されない。
事件番号: 昭和37(オ)1312 / 裁判年月日: 昭和38年10月1日 / 結論: 棄却
差戻後の第一審において改めて本案の終局判決がなされるまでに、訴の取下がなされた場合には、再訴禁止の効果を生じない。
事件番号: 昭和39(オ)573 / 裁判年月日: 昭和40年12月2日 / 結論: 棄却
訴の変更があつた場合においては、従前の訴訟資料はそのまま引きつがれると解するのが相当である。